「川魚はあまり好きではないけれど、鮎だけは別格」という方は多いのではないでしょうか。
すらりとした形の美しさと、淡白で上品、香気溢れる味の良さで、鮎は古代から高級魚として扱われてきました。
鮎のおいしさの秘密は餌にあります。
【材料】鮎…1尾/塩…適量/たで酢…大さじ1/はじかみ(芽生姜の甘酢漬け)…1本
【作り方】 ①鮎は肛門の手前を軽くしごいてフンを出し、洗って水気を拭き取ったら鮎が波打つように串を打つ。ヒレと鼻先が焦げないように化粧塩をして両面に軽く塩を振ったら、頭を下にして強火の遠火で両面を焼く。家庭用グリルで焼く場合は表、裏、表の順で焼くとふっくらと仕上がる。②たで酢、はじかみ、スダチなどを添える。
秋、川の下流で孵化した鮎の稚魚は、一旦海に流され、そこで冬を越します。
春になって、5~6cmに成長した鮎は、生まれた川に戻ってきて上流を目指し、川底の石についた、「石垢《いしあか》」と呼ばれる珪藻《けいそう》や藍藻《らんそう》を食べるため、藻の香りが鮎の味を良くするというわけです。
それゆえ、鮎は「香魚」とも書きます。
夏の間、川の上流で過ごした「若鮎」は、秋になると卵をはらみ、産卵のために下流に降りてきます。
これを「落ち鮎」と呼び、川底の石に卵を産みつけた後は、そのまま命を落とす場合が多く、1年で一生を終えてしまうことから、古くは「年魚」という字を使われてもいました。
中国の古書『食経』(620年頃)に、「鮎は春生じ、夏長じ、秋衰え、冬死す。故に年魚と名付く」とあります。
こういった命のはかなさも、滅びや散り際に美学を求める日本人の好みに合っていたのかも知れません。
鮎を“魚”偏に“占”と書く理由はいくつかあります。