終電時間繰り上げも
混雑発生の可能性が

 特措法には緊急事態宣言時に公共交通の遮断または減便を要請する直接の規定はないが、政府対策本部は、感染症対策を「的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるとき」は指定公共機関に対して感染症対策の総合調整を行うことができると定められており、産経新聞は、政府はこの規定に基づいて調整中であるとしている。

 これに対して鉄道事業者側は、通勤列車の運行については、政府からの要請があればその都度検討するという立場をとっている。

 市民の外出を抑制するために公共交通機関を減便するという手法は、これまでもロンドンやニューヨークで行われたが、いずれも満員電車が問題化して、方針の転換を余儀なくされた前例がある。

 7日付の時事通信によれば、安倍晋三首相は、政府の専門家会議のメンバーで北海道大学の西浦博教授の「厳格な外出制限で人と人との接触を8割減らせば、感染者数は減少に転じる」との試算に強い関心を示し、最低限の経済活動は保ちつつ、感染抑制を図れると判断。政権内の慎重論を押し切り、緊急事態宣言の発令を決断したという。

 そうであれば、公共交通機関という「蛇口」を絞ることで、事実上の厳格な外出制限を行う選択肢が検討の俎上に載っても不思議ではない。だが、諸外国に比べて通勤の鉄道分担率が高く、周辺都市からの通勤者数が多い日本では、都市機能を維持するために鉄道輸送は不可欠だ。通勤者の減少以上に列車を減便すれば、現在以上の混雑が発生し、感染拡大の要因となる「3密」(密集、密接、密閉)の危険性が高まりかねない。

 これまでのところ、通勤電車を起因としたクラスター発生は確認されておらず、政府の専門家会議は、「通勤電車は密集、密閉空間であるが、密接な会話がないため、直ちに感染拡大の要因にはなりえない」という見解を示しているが、今後感染者数が増加すれば、満員電車が感染の温床となる可能性も否定できないだろう。事実、感染経路が不明な患者も増えており、通勤電車が安全だという保証はどこにもない。

 検討中といわれる最終列車の繰り上げにしても、最終列車に乗っているのは必ずしも夜の街で一杯飲んだ後の人だけではなく、時差通勤の実施により、夜遅くに帰宅している人もいる。最終列車を繰り上げるということは、その分全体の輸送力が低下するということになり、深夜時間帯の利用者が最終列車に集中し、混雑が発生する可能性もある。実施には鉄道事業者との入念な打ち合わせと、厳密な検証が必要になることを重ねて記しておきたい。

 史上、例を見ない非常事態に、人心は動揺している。政府には慎重な対応と、丁寧な説明を求めたい。