たとえば、あなたが新しく車を購入したとき、自分の買った車と同じ車種の車が街なかでしょっちゅう目につくようになった、というような経験はないだろうか。自分の買った車と同じ車種の車がこんなに街なかを走っていたかな……と、ふと思うのだ。

 しかし、自分が車を買ったからといって、突然その車が街なかに増えるということはありえない。

 RASの機能により、自分の買った車が自分にとって重要な情報となったため、いままでは遮断していた情報が急に脳にインプットされるようになったのだ。

 このようなRAS機能をうまく読書に使うことができれば、「見る」だけで効率的に情報をインプットすることができる。

 自分にとって重要な情報がなんであるかを明確にすれば、「見る」だけでその情報が本の文字情報の中から浮かび上がってくるのだ。

「本を読む目的」を
強く意識してから読む

 脳のRAS機能を上手に使うコツは、自分にとって重要な情報を「明確にする」ということだ。

 そのために、本を読む前に、「この本から○○という情報を探し出す」というように、インプットしたい内容を鮮明にし、それを強く意識することが必要だ。

 たとえばビジネス書を読むのであれば、「この本から、タスク処理を効率化するポイントとなる情報を探し出す」とか、「この本から、初対面でも信頼関係を構築するコツについての情報を探し出す」というように意識をするのだ。本のどこかに読む目的を書き出すのもいいだろう。

 この方法は、読書だけでなく、文章を読むあらゆる場面において役に立つ。

 たとえば私は、弁護士の業務として、大量に書類を読み込まなければいけないときに使っている。

 ある裁判案件で、従業員が横領行為をした疑いがあり、会社が懲戒解雇をしたものの、従業員がその横領行為を否定して争われたことがあった。

 私は、解雇をした会社側の代理人として弁護活動をしていた。横領行為があったことを示す証拠として関連する経理資料すべてに目を通す必要があると考え、会社担当者に資料を用意してもらったところ、ダンボール4箱分もの量になった。

 何も意識せずその資料を読んでいたのではとても裁判期日に間に合わない。

 そのため、「この資料の中から、従業員の主張と矛盾し、かつ横領行為の根拠となる情報を探し出す」と強く意識して資料を「見る」作業を続けた。

 すると、裁判期日に間に合う形で膨大な資料の中から、それに該当するたった2枚ほどの書類を見つけ出すことができたのだ。結果として裁判に勝つことができたのである。