キャリアに正解などない
失った好奇心を取り戻そう

東大・柳川範之教授が語る「人生100年時代」の働き方

──キャリアをどう考えればいいか悩んでいる就活生が多いと思います。どうすればいいでしょうか。

 キャリアには正解なんてないという割り切りが必要です。私も今は大学で教えていますが、もしかしたら違う仕事の方が楽しく働けたかもしれません。でも誰も全ての選択肢を試せないので、何が一番いいかは、誰にも分からない。キャリアというのはしょせんそんなものです。分からない中で、手探りで、動ける範囲で動いて、ベターなものを探すしかない。

 そのベースとして必要なのは好奇心です。何かを選ぶ、試すには、その仕事や会社が面白いのではないかという関心が不可欠なのです。

 子どもの頃には誰にでもあった好奇心ですが、学校教育を経てだんだんすり減っていきます。その好奇心を失わないこと、すり減った好奇心を取り戻し、まず幅広くいろいろなことに関心を寄せ、面白いと思う気持ちを持つこと。それさえあればなんとかなります。

──就活で、親がつい心配になり、子どもの好奇心の芽をつむこともありそうですね。

 親が口出ししないことが肝要です。本人の自主性と好奇心を伸ばす形でサポートしてあげてください。最近の子どもは真面目で親思いなので、親の望みや価値観をくんで、それに沿おうとする。こういう業界がいいんじゃないか、などと言わず、子どもに行きたい業界や会社の話をさせることです。よかれと思っていろいろ言いたい気持ちは分かりますが、親の世代は過去の30年しか知らない。子どもはこれからの50年を生きるのです。そこに過去の30年の価値観と経験は、ほとんど役に立ちません。

 昔はいい会社に就職できるかどうかで一生が決まることもありましたが、今や就職は一生を決めるものでもなんでもない。就職とは、その会社でどういう経験を積めるかということにすぎないのです。

 就活生は、これから5年、10年くらいをイメージして、どこでどんな経験を積むのが必要なのかを考え、就活に臨むのがいいでしょう。そして、会社に入ってもどのように働きたいか、今どんな知識が必要なのかを考え続け、学び続けてください。