卵は健康食品か、悪玉コレステロールを増やして心臓病を誘発する悪玉食品か──。長年の論争に決着をつける新しいエビデンス(科学的根拠)がでた。
米ハーバード大学公衆衛生学部の研究者は、30年以上継続している女性看護師と男性医療従事者(医師、歯科医師、薬剤師、整体師など)を対象とした疫学調査から、登録時に心血管疾患や2型糖尿病にかかっていなかった21万5618人分のデータを解析。
卵(全卵)を食べる頻度を──(1)一カ月に1個未満、(2)一カ月に1~4個未満、(3)週1~3個未満、(4)週3~5個未満、(5)週5~7個未満、(6)1日1個以上の六つの集団にわけて心筋梗塞や狭心症、脳卒中との関連を調べた。卵白のみの摂取や卵が入った焼き菓子などは除外されている。
卵の摂取量とその他の要素をみると、卵の摂取量が多いほど体格指数が高く、運動不足の傾向があるほか、赤身肉やベーコン、加工肉、精製穀物など、いわゆる「身体に悪い」とみなされる食べ物の摂取量が多かった。
同研究の最長32年間の追跡期間中、1万4806人が心血管疾患を発症。他の影響を排して卵の摂取量との関連をみると、1日1個以上の卵の摂取と心筋梗塞との関連は確認されなかった。同じく、狭心症などの冠動脈疾患と脳卒中でも関連は認められなかった。
研究グループはさらに、日本の「NIPPON DATA80/90」を含む、28の疫学調査を追加し、合計172万人以上のデータから総合的な解析を行った。
その結果、米国以外の住民のデータを追加しても、卵の消費量と心血管疾患との関連は認められなかった。むしろ、アジア人の集団では、1日あたりの摂取量が1個増えるごとに心血管疾患リスクが低下する傾向が示されたのだ。
研究者は「アジア人は1日1個以上の卵を食べることで、心血管疾患リスクを低減できる可能性が示された」としている。
卵は、身体の組成や血管の健康に欠かせない必須アミノ酸9種類を含んだ高品質のタンパク食品だ。全体の栄養バランスをみながら、日々の食事に上手に取り入れよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)