コレステロール含有量が高い、として脂質異常症患者は「避けるよう」指導されてきた卵。1日1個までと制限されている方も多かろう。内臓脂肪型肥満のメタボ親父なら、なおさらである。ところが先月、「メタボリズム」という医学雑誌に載った研究によれば、メタボリック症候群患者の減量食に全卵を加えると、脂質バランスが改善され、糖尿病の原因となるインスリン抵抗性が改善されたというのである。
試験では、メタボの中高年男女に炭水化物を制限した減量食と毎日3個の全卵、または代用卵を12週間続けてもらった。全卵を食べている場合、試験開始前の2倍以上のコレステロール量を摂取している計算になる。炭水化物の制限量は総エネルギー比率25~30%まで。ちなみに身体活動レベルが普通程度の日本人男性の食事摂取基準(50~69歳)で計算してみると、ご飯は茶碗に軽く2杯が1日の上限。まぁ、痩せるだろうことは想像できる。
はたして12週間後、被験者の血清脂質を検査した結果、全卵を食べていたグループは代用卵グループより有意に善玉コレステロール(HDL)が上昇し、悪玉コレステロール(LDL)が減少。何より動脈硬化性疾患リスクと関連する「LH比」が有意に改善された。1日に3個も卵を食べていたにもかかわらず、である。インスリン抵抗性を示す「HOMR-IR」も下がっていた。
一昔前まで卵は完全栄養食と見なされていた。実際、天然自然の卵には必須ビタミンとミネラルが含まれている。他の食品では摂りにくいビタミンDも豊富だ。また、卵黄に含まれるルテインは優秀な抗酸化物質。近年は失明の原因となる加齢性黄斑変性症の予防効果が注目されている。
とはいえ、やみくもに卵を食べればいいワケではない。今回の結果も炭水化物制限とセットという点をお忘れなく。要はバランスなのだ。さて、卵が最も本領を発揮するのは朝食時。良質のタンパク質が「体内時計」をリセットし1日の代謝リズムを整えてくれる。卵付きのおいしい朝ご飯は健康(と家庭円満)の秘訣なのです。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)