戦略論であり「日本人特有の文化論」でもある

 私たち現代日本人と、大東亜戦争を戦った日本軍の組織は違うといえるでしょうか?

 最前線、現場の日本兵は文字通り決死の覚悟で戦い続けました。それでも「組織的な欠陥」によるマイナスを補うことはできなかった冷徹な事実があります。『失敗の本質』は、目標として「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶すること」と記述しています。

 本書は『失敗の本質』という偉大な書籍が世に出てから30年近くを経過した現代で、私たち日本人全員が『失敗の本質』から「本当に学ぶことができているか」を検証することも狙いとしています。

 日本の組織で繰り返される失敗と『失敗の本質』が分析した日本軍の敗北。同様の事例が起きるたびに、『失敗の本質』には日本人論としての重要な側面があることを、私たちは何度も思い知らされます。

『失敗の本質』から学ぶ「敗戦七つの理由」

 時代の転換点で日本軍は負けたのだ、という主旨の言葉で結論づけるのは簡単です。大切なのは、貴重な教訓から私たちが「次の失敗」をどれほど上手く避けることができるか、具体策を引き出すことではないでしょうか。

 変化に直面している会社、過去に成功した組織が内部で抱える次の失敗を避け、新たなイノベーションを成し遂げる方法を明らかにする。それこそが本書の最終目標であり、『失敗の本質』をビジネスをはじめとするさまざまな局面で活用するために必要なことだと考えています。

 本書は、『失敗の本質』をすぐ使えるように、次の7つの視点で紐解きます。

第一章「戦略性」
 日本人は「大きく考える」ことが苦手であり、俯瞰的な視点から最終目標への道筋をつくり上げることに失敗しがちです。この章では、日本人の「戦略性の弱さ」について解説します。

第二章「思考法」
 日本人は革新が苦手で練磨が得意。行き詰まりを見せる日本的思考法から脱却するためにも、イノベーションへの導入として、「日本人特有の思考法」を解説します。

第三章「イノベーション」
 自分たちでルールをつくり出すことができず、既存のルールに習熟することばかりを目指す日本人の気質。日本軍が米軍に「戦い方」において敗れた理由を読み解きます。

第四章「型の伝承」
 創造ではなく「方法」に依存する日本人。私たちの文化と組織意識の中には、イノベーションの芽を潰してしまう要素があることを明らかにしていきます。

第五章「組織運営」
 日本軍の上層部は、現場活用が徹底的に下手でした。組織の中央部と現場をどう結び付け、いかに勝利に近づけるかを考えます。

第六章「リーダーシップ」
 現実を直視しつつ、優れた判断を下すことが常に求められる戦場。正しい方向性に組織を引っ張り、環境変化を乗り越えるためにリーダーが行うべきことについて解説します。第七章「日本的メンタリティ」「空気」の存在や、厳しい現実から目を背ける危険な思考への集団感染、そして日本軍の敗北を象徴する「リスク管理の誤解」について考えます。

 新たな転換期を迎えた世界と現代日本。この国を覆う巨大な閉塞感の正体は、組織運営の基盤が「あのとき」とまるで変わっていないことで、再び生み出されたものだと感じます。

 しかし、今回の転換点には、私たち日本人は絶対に勝たなければいけません。

 名著『失敗の本質』は、そのためにこそ書かれたのですから。

 私たち日本人は大転換期に勝つ準備ができているはずなのです。

 今こそ、転換期で飛躍するために、『失敗の本質』から打開策を学んでいただきたいと思います。

鈴木博毅

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