特定の説に引きずられないためには
その「背景」を知るべきだ

 断っておくが、中国政府が香港の民主化運動を鎮圧するために、ウイルスをバラまいたなどと主張をするつもりは毛頭ない。

 ただ、「武漢ウイルス研究所起源説」を信じる人が増えているという事実があり、それは、これまで見てきたように中国政府が「コロナパニックで逆に得をした」という事実がいくつも出てきている、という背景があるからだと申し上げているだけだ。

 ちなみに、「得」とまではいえないが、今回のウィルスの最大の特徴である「子どもや若者より高齢者の致死率が圧倒的に高い」ということも、この説を後押ししている。

「中国経済の司令塔」として知られる国家発展改革委員会傘下のシンクタンク、中国国際経済交流センターの分析では、2025年に中国の高齢者は総人口の14%以上となって高齢化社会へ突入し、そこから凄まじい勢いで高齢化が進んでいくということで、「豊かになる前に老いる」と危機感を募らせている。

 つまり、中国政府が今、最も頭を抱えているのは、トランプ大統領でも、香港の民主化運動でもなく、「億単位で増えていく老人をどうするか」という問題なのだ。

 そんなところに武漢で発生したのが、「80代以上の致死率は15%」(中国疾病対策予防センター)という新型コロナウィルスだ。かつて人口爆発を防ぐために「一人っ子政策」で産児制限をしたあの国ならばーーと「人工説」に飛びつく人が出てくるのも、仕方のない部分があるのだ。

 BCG接種率の違いによって、死亡率に大きく差が出ているように、新型コロナについてはまだ、わかっていないことが多い。そのため、どうしてもいろんな言説が飛び交う。しかし、特定の説に易々と飛びついてしまうのはまずい。

 なぜそのような話が出てきたのか。なぜそのように考える人が多いのか。数々の見方が飛び交う混乱期に情報と向き合うためには、その「背景」を知ることが重要なのではないか。