業績が見えない、評価ができない……
「目標が設定できない」は本当か?

 よくある反論の一つに、「生死にかかわる緊急事態なので、目標設定に構っていられない」というものがある。もちろん、感染者が発生した直後の企業や、休業要請やイベント自粛、外出抑制の状況の中で、完全に業務停止してしまった企業であれば、社員の目標設定はできないだろう。しかし、業務を遂行しているのであれば、オフィスに出社しているか在宅であるかを問わず、目標設定をして遂行業務を明確に定めることが不可欠だ。

 また、「勤務の状況が個別に異なる中で目標設定することは、社員に対して不公平で不利益を与える」という意見もある。しかし、そもそも目標設定なしに評価されることの方が、社員に対して不利益で不公平だ。業務を行う場所や家族の状況など、在宅勤務の環境は確かに個別に異なる。ただ、そうした場合には、会社貸与のPCとスマートフォンを使用して業務を行うなどの共通の前提で目標設定すればよいだけの話だ。

「在宅勤務で部下が日々業務を行う姿が見えないので、上司は評価できないから、目標設定しても意味がない」という声も上がる。対面でこそ伝わる熱意の大小、取り組む姿勢の違いなどは、確かにある。しかし、直接顔を合わせる機会がなくても、ネット会議や電話、メールのやりとり、システム入力などによるプロセスと実績を把握することで評価は可能だ。

 大なり小なりビジネスに影響が出ている企業がほとんどの中、「新規案件が獲得できないので、目標が設定できない」という意見も多い。これに対しては、新規案件が獲得できなければ、その目標水準を下げたり、あるいはなしにしたりして、既存案件のフォローのウエートを高める方法もある。在宅勤務の中でいかに効率よく業務を遂行するかということ自体も目標になりうる。

 また、「会社全体の業績が読めない中、個別の目標設定などできるはずがない」という声もある。このような反論をする人に聞いてみると、ほとんどの人が、目標設定イコール年度の目標設定、という固定観念を持っていることがわかった。年度では業績が読めないかもしれない。だったら、3カ月単位、1カ月単位で目標設定すればよい。あるいは、一旦年度の目標を設定するが、3カ月ごとに年度の設定目標を修正することを織り込んでおけばよい。