パンデミックは心の健康も直撃する。米心理学会(APA)は、社会的距離をとっている最中に陥りやすい心理状態と対処法を紹介している。
●恐怖や不安──自分や家族が感染したり、他人を感染させることへの恐怖や経済的な不安で眠れなくなることがある。
●抑うつ気分や退屈──社会生活から切り離され、抑うつ気分が生じる。家にいる時間が長くなり、退屈や孤独を感じる。
●イライラ、怒り──個人の自由が妨げられてフラストレーションがたまり、怒りやイライラを感じ他罰的になる。
●差別──COVID-19(新型コロナウイルス感染症)陽性の人は、他人から後ろ指を指され、非難されているように感じる。
こうした心理状態は誰にでも起こり得るが、高齢者や持病がある人、あるいは医療従事者とその家族など感染ハイリスク群の人は、苦痛を感じることが多いだろう。
対処法としては、
(1)COVID-19に関するニュースは信頼できる情報源に限定する。ワイドショーやツイッターにかじりつくより音楽や映画鑑賞に費やす時間を増やそう。
(2)新しい毎日の習慣をつくり、守ろう。生活のなかに秩序があると、コロコロ変わる行政の対応や周囲に振り回されずに済む。
(3)他人とつながろう。SNSやチャットを通じて親しい人と交流すること。お互いに不安な気持ちを打ち明け、支え合うことが大切。
(4)健康的な生活習慣の維持。よく眠って健康的な食事を心がけ、自宅でできる運動をしよう。また、空いた時間を飲酒で埋めようとしないこと。オンラインの飲み会は際限がなくなるのでお勧めしない。
(5)自分が対処できることを実践し、変えられないことを受け容れよう。心を落ち着けるためには、日記を付けたり、瞑想やリラクセーションを試してみるといい。
また人間は不思議なもので、感染したくないと汲々とするより、他人を感染させない利他的な行動を優先すると心が落ち着く。
パンデミックを克服するために大切なことは、互いを思いやる気持ちなのかもしれない。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)