効果のあるパワハラ対策で
経営リスクを軽減

 パワハラは、セクハラやマタハラよりも予防や啓発が難しい。「パワハラのアウトとセーフがわからない」「パワハラと言われそうで、指導ができない」という管理職の声もよく聞かれる。パワハラは業務指導の延長で起こるので、どこまでが指導で、どこからがパワハラなのか、線引きが曖昧だ。またパワハラ行為者のほとんどが無自覚であり、本人は熱心に「指導」をしているつもりなので、自分で気づくことができない。

「管理職として結果を残しているので、自分のやり方を悪いとは思いません。また無自覚なので、社内でパワハラ研修を行ってもどうしても他人事となり、実はほとんど効果を上げていません」(向井氏)

 向井氏が講師を務めるハラスメント予防研修では、パワハラ行為者やその予備軍に自覚を促すための「職場環境チェックリスト」を活用している。過去1年間に起きた出来事、自分に当てはまる内容にチェックをつけていくと、研修内では「え、これもパワハラ?」と驚く声がよく聞かれる。自分の基準が、今の世の中のハラスメント基準と違っていること、「普通」ではないことに気がつく。

「部下を持つすべての管理職の方に、訴えられるリスクを自覚していただき、『自分事』として適切な予防策を理解していただくことが重要です」(向井氏)

パワハラ防止義務化が企業経営に及ぼすリスクとは「職場環境チェックリスト」(『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』より。向井氏の経験則では「30項目のうち10項目以上当てはまると、パワハラを行っている可能性が高い」
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 「職場環境チェックリスト」は、向井氏の最新刊『管理職のためのハラスメント予防&対応ブック』にも解説つきで収録されている。本書は「パワハラ防止法」の指針を踏まえ、経営者や管理職が知っておくべきポイントをまんがとイラストでわかりやすく解説している。

 人事担当者は、社内セミナーのテキスト等として活用いただいても効果を上げていただける内容だ。最近は、テレワーク中の管理職に課題図書として配布する企業もある。これからパワハラ対策を進める企業や、これまでのハラスメント対策を強化したい経営者や人事担当者は、ぜひ参考にしていただきたい。