弱者を狙い撃ちにするのが、新型コロナウイルス。こう指摘するのは、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博会長だ。感染拡大で見えてきたのは日本経済の弱点と矛盾。特集『銀行vsコロナ』(全12回)の#8では、佐藤会長にポストコロナ社会の課題を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)
ゾンビ企業の処理は金融システムに負荷も
日銀・政府・銀行が一体となり取り組む必要
――コロナ危機は、銀行にどのような打撃を与えるとみていますか。
一番大きいのはクレジットコストだ。先行きはまだ分からないが、影響の大きい一部の業種については、仮に倒れるということがなくても格付けを下げなければならない企業がかなり出てくる。グローバルに見ても地域によっては大きく傷むところが出てくる。国内だけの問題ではないので、銀行としても相当に覚悟しなければならない。
ただ、グローバルに見ると邦銀は、例えば欧州と比べても格段に強いので、倒れてしまうことはない。一方で、国内では地域金融機関、そして海外の金融機関にどこまで負荷がかかってくるのかについてはシリアスに見ている。
――金融システムにも大きな負荷がかかるということでしょうか。
金を借りていれば存続できたいわゆるゾンビ企業がいよいよダメになってくると思う。ゾンビ企業だからといって、必ずしも消えるべき会社だとは思わないが、そのときに金融システムに問題を波及させないことが重要だ。日本銀行と政府、銀行が一体となり、そうした企業が破綻した場合、どの程度のインパクトが生じるのかという実態を把握をしながら、問題解決に取り組むことが必要になる。
例えば、融資の肩代わりや、立ち行かない企業をどこかと統合させることも必要になる。銀行にはそうしたノウハウが山ほどある。日本の産業を壊さないためにもそうした取り組みは必要になる。
――海外展開をしているメガバンクは、構造的にドル調達リスクを抱えています。懸念はありませんか。
米連邦準備制度(FED)はドル不足が金融危機のトリガーになるリスクを十分に理解しているので、ドルを気前よく出している。しかし、今後もこの政策が続くかどうかは、経済の立ち上がり方によって決まってくるだろう。米政府が自国優先主義の考えに立ち、米国からまず立ち上がろうとしたときに、他国のドルニーズなんてどうでもいいという動きをするかもしれない。そういう政策転換は怖い。