新型コロナウイルスの感染は世界中に広がり、グローバル経済を直撃している。その影響は、三菱UFJフィナンシャル・グループなど3メガバンクが拡大を続けてきた海外ビジネスにも及びかねない。特に懸念されるのは、航空機リース事業、原油などの資源関連貸し出し、米国の企業向け債権を束ねたローン担保証券(CLO)だ。特集『銀行vsコロナ』(全12回)の#6では、3メガバンクの海外ビジネスに潜むリスクを見る。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
新型コロナ、航空機リースに打撃
三菱UFJリースの統合案件にも影響か
金融業界で、先行きが注目されている一つのM&A案件がある。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)傘下の三菱UFJリース(MUL)と、日立製作所の持分法適用会社でリース事業を手掛ける日立キャピタルの経営統合だ。
MULの純利益は707億円(2020年3月期)、日立キャピタルは194億円(19年3月期)。両社が統合すれば、競合の三井住友ファイナンス&リース(20年3月期純利益は612億円)との差を広げ、最大手のオリックスに次ぐ業界2位の座を盤石にする。「リースは成長産業。業界地図を書き換える再編だけに、注目度は高い」(大手銀行関係者)という案件である。
もともと日立製作所が進める親子上場の解消方針の流れを受け、16年に三菱UFJFGとMULがそれぞれ23%、4.2%ずつ日立キャピタルに出資。将来の経営統合に向けて協議を重ねてきた。「MULの方が規模も大きく、日立キャピタルをのみ込むつもりで、統合比率なども有利に進めていた」と、三菱UFJFG関係者は話す。
ところが、新型コロナウイルスがもたらした危機により、状況は一変した。規模で劣後する日立キャピタルの立場ががぜん強くなっているのである。理由は、両社が手掛ける航空機リースの差だ。実際に、MULは事業収益に占める航空機リースの割合が30.2%(20年3月期)。一方、日立キャピタルは航空機リースを扱っておらず、その分のダメージを免れている。MULは今年度の当期利益見通しが前年度よりもほぼ半減の350億~400億円とする参考値を出した。航空機リースが重荷になる中で、「両社の統合協議は日立キャピタルに有利に傾く」(前出の大手銀行関係者)との見方が出ている。