銀行vsコロナ#5
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新型コロナウイルスによってもたらされた世界同時不況は、メガバンクの大口融資先企業も揺さぶっている。投資会社に変貌したソフトバンクグループ、前例なき廃炉処理を進める東京電力も例外ではない。特集『銀行vsコロナ』(全12回)の#5では、巨大な信用リスクの顕在化に直面する主力銀行の苦悩をレポートする。(ダイヤモンド編集部副編集長 布施太郎)

みずほを悩ませるソフトバンク
かつては銀行と二人三脚で拡大路線

 昨年末、みずほフィナンシャルグループ(FG)の「リスク委員会」に一つの企業名が挙がった。中核のみずほ銀行がメインバンクを担うソフトバンクグループ(G)である。

「リスク委員会に個別企業の名前が挙がるのは極めて珍しい」。みずほの幹部はこう明かす。

 通常、貸し出しが集中しているような業界や国・地域、そして個別企業の信用リスクは、業務執行ラインに設けられた「リスク管理委員会」でモニタリングし、必要な場合には次の対応に踏み出す。

 一方、リスク委員会は、指名委員会や報酬委員会と並ぶ取締役会に直結する組織だ。メンバーは委員長である社内の取締役に加え、社外取締役と社外の専門家の3人。大局的な観点からグループのリスク管理体制を監督し、取締役会に助言する。それだけに個別企業のリスクが俎上に載ることはほとんどない。

 ソフトバンクGは、みずほFGにとってそれだけ注意を要する貸出先といえる。

 もともとソフトバンクGの孫正義会長兼社長は、3メガバンクグループと蜜月関係を保ってきた。「日本企業全体が借り入れに慎重になる中、多額の借り入れをバネに事業を拡大してきた」(外資系証券幹部)からだ。中でも親密だったのが、みずほFGである。佐藤康博会長が銀行頭取・FG社長時代に「孫社長とはいつでも携帯電話でやりとりする仲」(関係者)を築き、ソフトバンクGの大型買収案件を陰に陽にサポートしてきた。

 ソフトバンクGの有利子負債は巨額だ。銀行からの借り入れや社債を合わせた有利子負債残高は、2020年3月末時点で約14兆円に上る。国内では最も多いトヨタ自動車の20兆5000億円に次ぐ規模だ。

 ソフトバンクGの株主総会招集通知によると、19年3月末時点の主な借り入れ先は、みずほ銀行がトップの5977億円、次いで三井住友銀行が4489億円、三菱UFJ銀行の3363億円と続く。社債発行による調達にも熱心で、「手数料の払いも気前よく」(取引銀行幹部)銀行の系列証券会社にも多額の手数料を落としてきた。メガバンクグループにとってソフトバンクGは上得意だったのである。