売り上げが止まり手元流動性が枯渇している企業が、融資を求めて銀行に駆け込んでいる。メガバンクになるとその額は10兆円規模だ。だが、その資金が将来不良債権に転化する可能性も否定できない。特集『銀行vsコロナ』(全12回)の#4では、不良債権増加の懸念と、コロナ危機が引き起こす産業再編の可能性をレポートする。(ダイヤモンド編集部 布施太郎、新井美江子)
レナウンの息の根を止めた4億円
コロナ倒産は始まったばかり
「レナウンは決して特別な破綻のケースにならない」――。企業再生に詳しい弁護士は、5月15日に東京地裁に民事再生法の適用を申請・受理され、実質経営破綻した老舗アパレルメーカー、レナウンについて、こう指摘した。
レナウンは、新型コロナウイルスの感染拡大以降、初めて破綻した上場企業となった。親会社である中国企業との間にあつれきが生じていたという特殊要因はあったにせよ、コロナ危機以前から業績は悪化しており、3月以降の外出自粛に伴う販売減少がとどめを刺したという意味で、同弁護士は「今後出てくる典型的なパターン」と説明した。
企業は手元資金さえ残っていれば、生き永らえることはできる。関係者によると、レナウンは5月15日付で支払手形8億円の決済をしなければならなかったが、同日時点での手元現預金は4億円。差額の4億円の手当てが付かず、東京地裁に駆け込んだ。
事前に中国の親会社と資金繰り破綻の危機について協議を続けてきたが、本来ならば親会社から支援があるべきところ、自助努力を求める以外の反応はなかったという。破綻瀬戸際の企業が取り得る手段は限られている。売掛金の早期回収か、買掛金の支払い延期、そして銀行からの借り入れである。当然、主力銀行にも駆け込んだ。