発達障害の女性が生きづらい日本社会の背景

 女性の発達障害ゆえの悩みの、もうひとつ大きな問題としてあげられるのは、周囲から「責められやすい」ことです。発達障害が原因で社会生活に問題が生じると、周囲から「だらしないからだ」、「努力不足だ」と責められることがしばしばあります。それがもとで自己否定的になりがちで、自己評価が低くなり、うつ病や不安障害など、精神的な不安定さを二次的にきたすことも珍しくありません。このような二次的な障害については、それだけを見れば、女性も男性も同様に見られます。しかし、女性のほうが「女の子なのに」と強く責められる傾向にあることが大きな問題です。

 日本社会においては、男女のジェンダー・ロール(性役割)が非常に固定的です。明るくて、にこやかで、気配り上手で、常に男性を立てる。そんな女性像に縛られています。いわゆる「やまとなでしこ」が、いまだに日本女性の理想像なのです。日本の男性は、若い世代においても、このようなイメージを女性に求めていることが珍しくありません。

「家事は女性がやるべし」という風潮も、男女雇用機会均等法が施行されて30年以上が経つにもかかわらず根強く残り、男性側もそれが当然だと思っています。職場では、お茶出しのような雑務は女性に期待されがちですが、入社3年目のある女性は、「雑務担当の女性が欠勤しているとき、新入社員や2年目の男性社員もいるのに、お茶出しを期待されるのは私になるんです」と述べていました。こういう風潮は日本の職場には根強く残っています。

 夫婦共働きの家庭においても、多くの場合、家事と育児は妻が担当しているのです。夫が家事や育児に協力しているといっても、ほんのわずかな部分しか担っていないケースがしばしば見られます。

 ところが、発達障害の女性の特性は、そうした「男性が求める女性の役割」とは正反対であることが多いのです。それが「女性なのに」と責められる原因です。結婚して妻や嫁、母など求められる役割が増えると、それが顕著になります。期待されるのは、いつも明るくにこやかで気配り上手な女性でいることですが、ASDの人は対人関係が上手でないため、親戚やご近所のつきあいができず、孤立してしまいます。

 ADHDの人は片づけが苦手で、家事全般も不得意な傾向があります。また悪意はないものの不用意な発言が多く、問題とされることもしばしばです。