新型コロナウイルス感染症が世界中に広がり、欧米では、介護施設でクラスター(集団)感染が多発したのにもかかわらず、その震源地である中国では、武漢を除き、介護施設では感染した入居者が極めて少なく、北京や上海の大都市では、感染者が皆無という状態だった。その理由や背景について解説する。(日中福祉プランニング代表 王 青)
新型コロナ震源地の中国では
クラスター感染が出ていない
新型コロナウイルスの感染が世界中に拡大した際に、アメリカやイタリアなど欧米の国々でひときわ目立ったのが、高齢者施設のクラスター(集団)感染である。
そもそも施設内では集団感染が起こりやすく、欧米では、地域によっては死亡者の約半数が高齢者施設の入居者であると報道されている。日本でも3月末、千葉県や名古屋市のデイサービスで利用者と職員に感染者が出た。また千葉県にある障害者施設では入居者の3分の2が感染する事態となった。
一方、新型コロナの震源地である中国では、武漢を除き、介護施設では感染した入居者が極めて少なく、北京や上海の大都市では、感染者が皆無という状態だった。
中国は、60歳以上(中国の高齢者の定義は60歳)の人口が2.4億人もいる「高齢者大国」。その中国で、なぜ、介護施設内への新型コロナウイルスの侵入を防ぐことができたのか。