ピタゴラスの発見
古代ギリシャのピタゴラスとその弟子たちの隆盛は、散歩中のピタゴラスが、鍛冶屋が鉄をたたく音には綺麗に響き合うものとそうでないものとがあることに気づいたところから始まった。ピタゴラスたちはさっそく鍛冶屋のもとを訪れ、なぜ音が違うのかを調べた。
すると、それぞれの鍛冶職人が使うハンマーの重さが違うからだということがわかった。さらに詳しく調べてみると、思いもよらない事実が判明する。なんと、綺麗に響き合うときには、ハンマーの重さの比が「2:1」とか「4:3」のような簡単な整数の比になっていたのである。
ピタゴラスたちが、この事実に大いに驚き、感動したであろうことは想像に難くない。人間が自然と美しいと感じる音程(2つの音の高さの違い)が、簡単な整数を使って説明できるなんて! 神様に仕掛けられたイタズラを見つけたような気持ちになったのではないか。そして、神様が「イタズラ」に使った数字(整数)こそ、神の言葉であると考えたとしても、不思議はないと思う。
生年月日の数字を足して占う
実際ピタゴラスとその弟子たちは程なくして「万物の源は数である」と考えるようになり、整数自体を神のように信仰するようになる。それはやがて1〜10の数字に次のような意味付けをする「ピタゴラス数秘術」に発展した。
数秘術とは、西洋占星術や易学等と並ぶ占術の1つで、ピタゴラス式の他はカバラ式等が有名である。現代の数秘術が定める数の意味は流派によって違いがあるが、ピタゴラスたちが行った意味付けはおよそ次のとおり。
1:理性 2:女性 3:男性 4:正義・真理 5:結婚
6:恋愛と霊魂 7:幸福 8:本質と愛 9:理想と野心
10:神聖な数
ピタゴラス数秘術を使った最も一般的な占い方は、生年月日の数字をすべて足し算した結果(2桁の数字になる)の各位の数を足して、最後に出てきた数字の意味を見るという方法である。たとえば、1974年7月18日生まれなら、
1+9+7+4+7+1+8=37 → 3+7=10
となり「10」を得るので「完全・宇宙」ということになる。
数字を直接計算にあてはめることもできる。
2+3=5 「女性+男性=結婚」
2×3=6 「女性×男性=恋愛」
4+5=9 「正義+結婚=理想」
なかなかよくできていると思ってもらえるのではないだろうか。ぜひ他にもいろいろやってみてもらいたい。もちろんピタゴラス数秘術におけるそれぞれの数の意味を大真面目に捉える必要はないが、こういうことを通して数字に血を通わせることができれば、それはそれで意味があるように思う。
(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)