米国をはじめ世界主要国の実体経済面でのかつてない急速な落ち込みが進行中だ。3月26日以降の公表された米国の新規失業保険請求件数は累計で4265万人、失業率は2月の3.5%から4月には14.7%へ一気に跳ね上がった。翌5月には13.3%に若干低下したが、リーマンショック時のピーク10.0%を上回っている。
一方、米国の株価は、S&P500で見ると2月につけた高値3393から3月の底値2191まで35.4%急落した。その後は半値戻しの水準2792を越えて回復し、6月5日引け時点では3193と2月の高値から5.9%下がった水準まで値を戻した。なんと急速な回復だろうか。
筆者は昨年来、信用循環の観点から2020年に米国経済は景気後退に移行すると予想してきたので、新型コロナウイルス感染爆発を契機に、劇的な形で不況と株価急落が起こったことには全く意外感はなかった(「米国の次期景気後退入りは2020年、最大4割の株価下落に要警戒」2019年7月19日掲載)。しかし急落後の株価の底打ちと回復の早さは予想外だった。
この先はどうなるか。マーケット・アナリストなどの見通しも大きく分かれている。悲観派は再び大きな下落局面があるとする二番底シナリオを予想している。一方、楽観派は、かつてない巨額財政支出と大胆な金融緩和の総動員で、今年後半か来年のV字景気回復を株価は織り込んでいるのだと見る。
後述する通り、筆者は年後半に株価反落局面は十分に可能性があると見ているが、中長期的な米国株価の上昇基調については確信している。
そもそも、このようなかつてない実体経済と株価動向の乖(かい)離は何によってもたらされたのだろうか。アナリストなどの一般的な見方は、危機対応として発動された量的金融緩和再開による超低金利で、債券市場からあぶりだされた投資資金が株式市場に回っているというものだ。しかし大規模な量的金融緩和は2008年のリーマンショック時にも実行されたが、その時はこのような株価の急速な底打ち反転は起こらなかった。何が違うのだろうか。