

このように、今回の評決、とりわけ「アップルの圧勝」という結果がもたらした波紋は、最終製品のみならず、スマートフォンのエコシステム全体にも波及しうる、大きなものである。
ただ短期的には、たとえばアンドロイドからWindowsPhoneなどへの移行は、ユーザの再獲得という意味でも容易ではない。またマイクロソフトやインテルも、潜在能力は十分以上であるとはいえ、スマートフォン市場でアップルに対抗するほどのエコシステムを作りきれるかは、正直分からない。従って、製品供給能力も含めて、アップルの繁栄は、短~中期的に、より一層強化されると考えるべきだろう。
アップル対サムスンの訴訟は、日本でも進んでおり、最初の判決は明日(8月31日)に下される予定となっている。サムスン端末を大きく取り扱うNTTドコモはすでに「大きな影響はない」とコメントしたようだが、日本での裁判や、それを受けた日本市場でのサムスン端末の販売に、今回の判決はどのような影響を及ぼすのだろうか。
日本におけるアップルとサムスンの係争において、争点の一つとなっているのは、バウンススクロール特許と呼ばれるものだ。これは、スマートフォンやタブレットで、画面をスクロールさせてコンテンツを眺めている時、終点(文書でいえば文末)にたどり着いたら、当該ページは少し動こうとするが、指をはなしたら画面が(バウンドしたような表現を伴って)元に戻る、という機能に関する特許である。
このバウンススクロール特許(US 7,469,381)は、米国でも再審査を経てなお生き残る、アップルの強力な武器であり、日本でも特許として有効である(特表2010-515978)。この特許が今回の米国の評決でも認められたことということは、日本国内の解釈や判断にも、何らかの影響が及ぶ可能性は否定できない。
一方、冒頭でも触れた通り、米国では今回の評決を受けてサムスン端末の販売差し止め請求が出る可能性が高まっている。こうした流れを受けて、直接訴訟の対象ではない最新機種の「ギャラクシーS3」も、特許に対する評決が出たことを受けて、何らかの措置に出る可能性が報じられている。