ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
スマートフォンの理想と現実

ゲームのルールは変わった――アップルvsサムスン訴訟の評決が意味するもの

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第32回】 2012年8月30日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
4
nextpage

 このように、今回の評決、とりわけ「アップルの圧勝」という結果がもたらした波紋は、最終製品のみならず、スマートフォンのエコシステム全体にも波及しうる、大きなものである。

 ただ短期的には、たとえばアンドロイドからWindowsPhoneなどへの移行は、ユーザの再獲得という意味でも容易ではない。またマイクロソフトやインテルも、潜在能力は十分以上であるとはいえ、スマートフォン市場でアップルに対抗するほどのエコシステムを作りきれるかは、正直分からない。従って、製品供給能力も含めて、アップルの繁栄は、短~中期的に、より一層強化されると考えるべきだろう。

日本市場への影響

 アップル対サムスンの訴訟は、日本でも進んでおり、最初の判決は明日(8月31日)に下される予定となっている。サムスン端末を大きく取り扱うNTTドコモはすでに「大きな影響はない」とコメントしたようだが、日本での裁判や、それを受けた日本市場でのサムスン端末の販売に、今回の判決はどのような影響を及ぼすのだろうか。

 日本におけるアップルとサムスンの係争において、争点の一つとなっているのは、バウンススクロール特許と呼ばれるものだ。これは、スマートフォンやタブレットで、画面をスクロールさせてコンテンツを眺めている時、終点(文書でいえば文末)にたどり着いたら、当該ページは少し動こうとするが、指をはなしたら画面が(バウンドしたような表現を伴って)元に戻る、という機能に関する特許である。

 このバウンススクロール特許(US 7,469,381)は、米国でも再審査を経てなお生き残る、アップルの強力な武器であり、日本でも特許として有効である(特表2010-515978)。この特許が今回の米国の評決でも認められたことということは、日本国内の解釈や判断にも、何らかの影響が及ぶ可能性は否定できない。

 一方、冒頭でも触れた通り、米国では今回の評決を受けてサムスン端末の販売差し止め請求が出る可能性が高まっている。こうした流れを受けて、直接訴訟の対象ではない最新機種の「ギャラクシーS3」も、特許に対する評決が出たことを受けて、何らかの措置に出る可能性が報じられている。

previous page
4
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

「スマートフォンの理想と現実」

⇒バックナンバー一覧