上海の総合株価指数は昨年10月のピーク時に比べ45%前後もの大幅な下落を見せている。印紙税引き下げ措置で4月下旬にいったん反発上昇したが、四川大地震の後は緩やかな下落が続いている。
一方で、上海の短期金融市場やデリバティブ市場は急拡大を見せている。マネーブローカー(日本の短資会社に相当)が昨年2社、営業を開始した。その1社、上海CFETS―ICAPインターナショナル・マネーブローキングのオフィスを見学させてもらった。
仲介されている取引は、人民元のコール、レポ、金利スワップ等である。ブローカーは皆中国人だった。東京のわれわれのオフィスの場合、デリバティブ取引のブローカーには英、米、豪などから来た人びとが非常に多い。東京でデリバティブ取引を行なう外資系金融機関のトレーダーに英語圏の外国人が多く、取引仲介のほうも英語圏の人が増加しがちなのだ。
上海はいまだそうなっていない。地元出身ブローカーは香港でトレーニングを受けてから配属される。大声で叫びながら取引するなど、想像を上回る活況ぶりだった。
中国人民銀行が発表した「中国貨幣政策執行報告2008年第一季度」によれば、人民元金利スワップの取引金額(想定元本)は、2006年は356億元だったが、2007年は2187億元へ急増した。今年第1四半期は前年比2.1倍の拡大を見せている。OIS(Overnight Index Swap)取引やFRA(Forward Rate Agreement)取引も増加している。
人民元の外国為替相場は、3年前にバスケット制に移行したとはいえ、いまだ厳格に管理されている。企業や個人向けの預金金利や貸出金利も規制されている。このため、現時点では人民元金融市場のイールドカーブの形成には不自然な点が多いものの、将来的には爆発的に市場規模が拡大するポテンシャルを秘めている。
ところで、上海の金融街にあるスターバックス(中国語表記「星巴克」)ではトール・ラテが25元だ(1元=15円換算で375円)。東京日本橋のスターバックスでは360円である。上海の金融街で地元サラリーマンが日常的に行くレストランならば12元前後で結構旨いランチが食べられる。つまり、スターバックスは異様に高いのだが、地元OLも飲んでいる。
上海の邦銀大手行の知人にスタッフの女性の感覚を聞いてもらったところ、ちょっとした贅沢気分が味わえるという。北京ではさほど人気がないという話も聞こえるので、お洒落なものを好む上海人の感性に「星巴克」のブランド戦略がマッチしているようだ。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)