世界中の教科書から「÷」が消える日は近い?

 「÷」は、1659年にスイスのヨハン・ハインリッヒ・ラーン(1622~1676)という数学者が著書の中で使ったのが最初である。分数表記を抽象化したものが起源だと言われている。「÷」はその後イギリスのアイザック・ニュートンなどが好んで使ったことから、イギリスを中心に広まった。

 割り算を表す記号には「/(スラッシュ)」や「:(コロン)」もある。「/」は「÷」よりも古い歴史を持っていて、現在も世界中で使われている。

 「:」は17世紀の終わり頃にライプニッツが割り算を表す記号として使ったのが最初と言われている。ドイツやフランスでは今も割り算を表す記号として「:」が使用されているが、他の国では比を表す記号として使われるのが普通である。

 実は、「÷」が一般的に使われている国はそう多くない。イギリス、アメリカ、日本の他は韓国やタイなどの一部の国に限られる。その他の国では「/」が一般的だ。

 2009年に国際標準化機構(ISO)が発行した数学の記号に関する国際規格「ISO 8000-2」では、割り算は「/」か分数によって表すと定めた上で、「割り算を表す記号として『÷』は使うべきではない」とはっきり書かれている。もしかしたら世界中の教科書から「÷」が消える日は近いかもしれない。

(本原稿は『とてつもない数学』からの抜粋です)