天才数学者たちの知性の煌めき、絵画や音楽などの背景にある芸術性、AIやビッグデータを支える有用性…。とても美しくて、あまりにも深遠で、ものすごく役に立つ学問である数学の魅力を、身近な話題を導入に、語りかけるような文章、丁寧な説明で解き明かす数学エッセイ『とてつもない数学』が6月4日に発刊。発売4日で1万部の大増刷となっている。

教育系YouTuberヨビノリたくみ氏から「色々な角度から『数学の美しさ』を実感できる一冊!!」と絶賛されたその内容の一部を紹介します。連載のバックナンバーはこちらから。

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ベンフォードの法則とは?

 私たちの身のまわりにあるたくさんの数字たち。新聞を読んでも、本を読んでも、ネットの記事を読んでも、必ずと言っていいほど数字は登場する。もちろん、営業成績、電話料金、住所、人口、株価等もすべて数字である。

 言うまでもなく、すべての数値は0~9の数字の組み合わせでできている。先頭の数字(最上位の桁の数字)に限って言えば、1~9のいずれかだ。では、ありとあらゆる数値の中で、先頭の数字として最も多い数字は何だろう?

「いろいろな数字が出てくるわけだから、どれも同じくらいじゃないか?」と思われるかもしれない。

 あるいは「時と場合によってバラバラなのだから、わかるわけないでしょう?」という感覚も理解できる。しかし、先頭の数字の表れ方には際立った規則性がある。ここではそれを紹介したいと思う。

 実は、先頭の数字の割合は一様ではないことがわかっている。先頭の数字として最も多いのは1であり、1から始まる数値の割合は全体の約30%を占める。

 仮に1~9の数字が均等に現れるのなら(先頭の数字なので0は除く)1/9≒11%になるはずだから、30%というのはずいぶん高い割合である。ちなみに先頭の数字が大きくなるほど、割合はだんだん小さくなり、9で始まる数の割合は全体の5%=1/20ほどしかない。

 これをベンフォードの法則という。

 ベンフォードの法則に基づいて計算した結果によると、先頭の数字が1~3である数値は全体の6割を超える。この法則をアメリカの物理学者フランク・ベンフォード(1883~1948)が提唱したのは1938年のことだった。ジュリアン・ハヴィル著『世界でもっとも奇妙な数学パズル』によると、当時彼は、分子量、人口、新聞の記事など、2万例を超えるサンプルを集めて、この法則にたどり着いたそうである。

細菌は指数関数的に増加する

 ものによって、理論値によく一致するものと、そうでもないものがあるのはなぜだろうか。ベンフォードの法則が成り立つ理由を、直観的に考えてみよう。

 たとえば細菌の増殖のように、自然界では、その数が一定の時間間隔で2倍になっていくことは珍しくない。このようなとき、仮に1年で倍になるとすると、初めに100個あったものは1年後には200個になる。2年後は400個、3年後は800個、4年後は1600個である。このような増え方を指数関数的な増加と言う。

 この例では100個から200個に増えるまで1年かかる。この間、個数の最初の数字はずっと1のままである。これに対し、たとえば個数の最初の数字が5である期間(500個から600個に増える期間)は約3ヵ月しかない。

 同じように、1000個から2000個に増えるのにかかる時間は1年だが、5000個から6000個に増えるのにかかる時間は、やはり約3ヵ月である。他のケースでも指数関数的に増加する変化においては、最初の数字が1である期間は、最初の数字が他の数字である期間に比べて、とりわけ長くなる。