6月9日、各地で真夏日を迎えた。気象庁によると、全国921の観測点のうち、最高気温30度以上の真夏日となったのは、323地点。35度以上の猛暑日となったところも6地点あり、最高気温は福岡県太宰府市の35.6度。最高気温35.4度を記録した島根県出雲市などは、6月の観測史上最高を更新したことになる。今後、注意しなければならないのが、熱中症だ。特に今年は新型コロナウイルスの影響で、マスク着用や在宅勤務などが日常となり、いつもの夏とは違った生活環境下に置かれる。「ウィズコロナ」を意識した令和2年版の熱中症対策を、国際医療福祉大学熱海病院検査部長の〆谷直人医師に聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)
外出自粛で暑さに慣れていない人も…
いつも以上に熱中症リスクに注意
――6月9日、東京都では初の真夏日を迎え、熱中症が疑われる症状で救急搬送された人もいました。2018年6~9月の熱中症による救急搬送人員数を見ると、最も多いのは7月ですが、6月末も少なくありません。
私たちの体には、体が暑さに慣れる「暑熱順化」という機能が備わっています。暑さにさらされたとき、体温が上昇し過ぎるのを防ぐため、体は発汗反応と皮膚血流反応によって熱を体の外へ逃します。これによって暑さに対して楽に過ごせるようになり、熱中症を起こしにくくなります。
ところが気温が上昇し始める6月は、暑さに体がまだ慣れておらず、暑熱順化がスムーズに機能しにくいのです。そのため7~8月よりも平均最高気温が低めであるにもかかわらず、6月に熱中症を起こす人が少なからずいるのです。
さらに今年は外出自粛で、3月以降、多くの人が家からほとんど出ずに過ごしています。体を動かす機会が減り、汗もかいていません。つまり暑熱順化ができるまで例年よりも時間がかかることが予想されるのです。いつも以上に熱中症リスクが高いと考えておいたほうがいいでしょう。
もう一つ、6月に熱中症が多い大きな要因としては、8月の真夏と比べて、熱中症に対する危機意識が低いことも挙げられます。この時期、「気が付いたら今日は暑かった」となりがちですが、暑いと感じたときから熱中症対策をするのでは遅いのです。熱中症が命にかかわる重篤な病気であることを認識し、早め早めの対策を講じるべきです。