軽口のつもりが
懲戒処分に

 D総務部長はB課長にも面談を行った。

 しかし驚いたことに、B課長には反省の色が全く見えなかった。

 監視の強化に関して理由を聞くと、「上司が部下の業務について進捗具合を確認するのは当然です」と悪びれることなく答えた。

 また、深夜まで延々と続くオンライン飲み会はやりすぎだと注意すると、「在宅勤務になると、どうしても課内のコミュニケーション不足になります。業務を円滑に進めるためにも“飲みニケーション”は必要です」と、ことごとく反論した。

 そこで、D総務部長は「では、女性の部下に対するセクハラ言動はどう説明するんだ?部下の着ているパジャマや下着に興味があるのかね?」と尋ねると、B課長はそのまま押し黙った。

「君の言動を私が知らないとでも思っているのか?飲み会とセクハラについては、部下たちから苦情が届いているし、証拠として現場の録画や録音も提出されているんだよ」

 D総務部長は続けた。

「君は業務のためと言って部下を監視することばかりに気を取られているが、自分の仕事は順調に進んでいるのかね?そうそう、7月上旬の乙社宛てへのプレゼンで使用する企画書はもうできたのか?」

「それは…」

「まだできていないのか?すぐ取り掛かりなさい。何ならこれから私が君をずっと監視しようか?」

 その後、管理職会議でB課長の処遇の件の話し合いがもたれた。

「在宅勤務導入前のB課長は管理職としての能力には問題はなかった。初めての在宅勤務で管理の要領がつかめず極端な行動に出たのだろう。今後指導方法を改善するようD総務部長から話してもらう」とする一方、「女性社員へのセクハラや度の過ぎたネット飲み会に対しては何らかの処分が必要」との意見も出たため、最終的な処遇は1週間後の会議で決定することになった。

 また、「テレワークに関する就業規則等を策定すること」と「課長以上を対象にハラスメント研修を受けること」を全員一致で決定し、D総務部長が両方の原案を作成することになった。

 翌日、D総務部長はB課長に対して、部下の管理方法を改善すること、オンライン飲み会は当分の間中止すること、また、B課長がセクハラを働いた女性社員に対する業務の指示と確認はC子主任が担当することを伝えた。

 そして飲み会とセクハラの件については懲戒処分の対象になるかもしれず、最終的に来週の管理職会議で決定することを伝えた。

「ほんの軽口のつもりだったのに、懲戒処分だなんて…」

 今さらながら事の重大さに気づいたB課長は、シュンとして下を向いた。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。