ゆおさんの兄は、4人家族の長男。学生時代から集団生活に強いストレスを感じていたようで、そのストレスを家の中で発散することがあった。

 兄は高校卒業後に自宅に引きこもることとなり、その生活は20年以上に及んだ。ただ、外部との関わりを絶つことが自分を守る手段だと知ってから知らずか、徐々に穏やかさを取り戻していった。

 兄の1日の生活は、規則正しく食事をし、母親と雑談。天気のいい日には100円程度の買い物をして、夕方に家に戻る。家族は「世間に迷惑をかけないよう、本人が心穏やかに過ごすことができれば」と願って、兄のそうした生活を見守った。

「在宅生活でも、自分でできることは自分でやってほしい」

 そんな家族の願いから、簡単な調理などの生活自立を支援する役割を母親が担った。

 兄は、他者との接触に強い拒絶反応を示した。来客があると、2階の自室に避難するか、外出する。

 一方、家族は「自尊感情や成功体験で育ち直ししてほしい」と、兄の自己肯定感を育む言葉がけなどに配慮。会話の際は否定的な表現を避けることを意識した。そのかいあって、母親や妹とは穏やかに会話ができるようになった。

唯一の理解者である母も高齢化
「自分も巻き込まれるのでは」

 本人を無理やり外に連れ出すことは本人を傷つけ、「最後のとりで」である家族へも心を閉ざしかねない――。ゆおさんはそんな危険性を感じていた。しかし、兄の唯一の理解者で支援者でもある母親もどんどん年老いてゆく中で、ゆおさんは妹の立場で、親亡き後の兄の生活を考慮しなければならなくなると考えた。

 とはいえ、ゆおさんは、兄が医療福祉行政的には「未診断」にすぎないことが、公的機関の支援につなぐ上で高いハードルを感じたという。そこで、解決の糸口を見つけるため、「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」をはじめ、精神障害者家族会、兄弟姉妹の会、精神保健福祉関連や引きこもり関連の研修会にも参加した。その中で、アウトリーチという形での支援があることや、高齢者も引きこもる子も一緒に見ようという考え方もあることを知り、大きな収穫を得たという。