その練習で大事なのが、実は「問いを作る能力」なんです。早押しクイズの練習って、そもそも大量の問題を用意しないとできないじゃないですか。だから自分たちで問題をつくる。しかもその問題は、マニアックすぎてもいけないし簡単すぎてもいけない。面白いと思われる問題をつくらなければならない。現在の人工知能は、そうした面白い問題はつくれないと思います。

茂木健一郎著『クオリアと人工意識』(講談社現代新書)

――総合的な「面白さ」は人工知能に判断できないと。

 人工知能時代に大事なのは、問いを設定する能力。正解を出すことよりも、です。これは聞いた話ですが、例えばアメリカの話でいうと、ある学校では「ヒップホップ調でラブレターを書きなさい」といった宿題が出たりするそうです。で、翌週には「そのラブレターへの返事をシェイクスピア風の格調高い文で書きなさい」と続く。そんな課題が中学生レベルで出されるんですね。

――中学生でシェイクスピアですか。日本の中学生だったら、まず読んでいないかもしれません。

 これは僕の主観ですが、アメリカと日本のビジネスパーソンを比較して思いますけど、教養の差が圧倒的です。「シェイクスピア風で」というお題が中学で成立するくらい、向こうの人たちはさまざまなことを学んでいます。しかも「ヒップホップ調でラブレター」という課題に正解はない。宿題をやる子どもたちは、こうかな?こうかな?と仮説を立て、問いを立て、いろいろ試すんです。その過程で問いの設定力が増す。

 社会が複雑化していけばいくほど正解が見当たらないことって増えていきますから、一朝一夕でできないことは承知の上で、教育を変えるべきだと折々に言っています。ビジネスの研修だって同じです。

――人の育み方から変えていく必要性、ですね。

 いまアートがビジネスでも注目されていますが、アートはクオリアや意識への問いに近接していて影響がある。グローバルエリートはそういったものへの知見、人間というものへの洞察の大切さを知っているので美術館に行くんです。

 しかも現代アートはコンセプト重視です。コンセプトを編み上げたものとして作品が生まれる。コンセプトワークでもある。そういったものに触れるという視点は、人工知能時代の人間の強みを生かす上で大事だと思いますね。