新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
「脳は使うほど良くなる」と教えてあげる
「人間の資質は変えようがない」という前提で考えていると、親は子どもの才能を「値踏み」しがちです。子どもの能力を、遺伝や才能から、この程度だろうと決めつけてしまうのです。すると子どもも「どうせ自分はこんなもの」と決めつけ、意欲をなくしてしまいます。
しかし、モチベーション研究の第一人者であるスタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授は、子どもたちに次のことを教えると、学習意欲や向上心に変化が見られるといいます。
「知能というと、人間には頭の良い人、普通の人、悪い人がいて、一生そのままだと思っている人が大勢いますが、最近の研究でそうではないことがわかってきました。脳は、筋肉と同じく、使えば使うほど性能がアップするのです。新しいことを学ぶと脳が成長して、頭が良くなっていくことが科学的に証明されています」(『マインドセット「やればできる!」の研究』草思社)
ドゥエック教授によると、この話をしたところ、まるでやる気のなかった少年が「ぼくはバカだと決まったわけじゃないんだね」と言って涙を浮かべたこともあったそうです。
子どもに「自分の脳は自分でつくっていくものだ」という気持ちを植えつけることで、実際にやる気が出るだけでなく、成績もアップしたのです。
「子どもの能力は頭の良し悪しではなく、練習や学習によって必ず伸びる」と信じることが重要だと、ドゥエック教授は強調しています。
では、子どもの資質を決めつけないためにどう接すればいいでしょうか?
【その1】「新しいことを学ぶと脳が成長する」と親自身も意識する
新しいことを学習したり経験したりすると、神経回路網に新たな結合が生まれ、脳は「成長」します。
「頭を使って勉強するほど脳細胞が成長し、以前は難しいと感じていたことが簡単に思えてくる」という脳のしくみを知り、「頭の良し悪しではなく、学習や練習が重要なのだ」と親子で共有します。
【その2】批判やほめ言葉に注意する
親は子どもを「天才!」とほめそやしたり、「才能がない」などと、持って生まれた能力にレッテルを貼ったりすることがありますが、そうではなく、どんな方法でどれだけ努力し、どんな選択をしたかという「プロセス」をほめるほうが子どもの能力アップにつながるとドゥエック教授はいっています。
【その3】基準を低くしない
「勉強に関心がなさそうだから」「頭がよくないから」と値踏みし、目標とする基準を低くしてもうまくはいきません。
ドゥエック教授の研究では、やる気のない様子の子どもたちにも十分なのびしろがあることがわかっています。
だからこそ、やみくもに基準を低くするのではなく、何がわかっていないのか、やり方のどこがまずいのかに注目し、どうすれば直せるかを一緒に考えることで、その子のもつ可能性を十分に発揮させることができるといっています。
【その4】「がんばりすぎ」にも注意する
優等生タイプの子どもでも、がんばっていることそのものが楽しいわけではなく、「完璧を望む親の期待に応えられなくなったらどうしよう」という不安で追い詰められているケースもあります。
「この子は大丈夫」と決めつけず、親は自分が無意識に子どもに完璧を求めてしまっていないか気をつけ、子どもが本当はどんなことを望んでいるのか、子どもの声にじっくりと耳を傾けるようにします。
「どうしたの? 何か、ママ(パパ)にできることある?」
「心配する気持ち、よくわかるよ。パパ(ママ)もそうだよ」
「たくさん気づいているんだね。すごいなぁ! そのなかから、どうしたらいいと思う?」
(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)
キャロル・S・ドゥエック『マインドセット「やればできる!」の研究』(今西康子訳、草思社)
会沢信彦編集『小学校 子どもがかがやくポジティブ言葉かけ辞典』(教育開発研究所)