4カ月前、多くの米国企業では自宅に戻った従業員が驚くべきことをやってのけた。動揺する様子もなく、仕事をこなしたのだ。子どもの世話をしたり他のことに気を取られたりしながらも、従業員が自宅できちんと仕事をしたことに企業の幹部は目を見張った。ツイッターやフェイスブックなどは長期的な在宅勤務の活用を早速表明した。物理的なオフィススペースを完全に廃止することにした企業もある。
ところが在宅勤務という実験が長引くにつれて、マイナス面が見え始めている。プロジェクトにはこれまで以上に時間がかかるようになった。研修はやりにくいし、新たな従業員を採用して会社に溶け込めるようにするのに手間がかかる。一部の経営者には、従業員と会社とのつながりが薄れていると感じている人もいる。若い従業員がオフィスで同僚の隣に座り、仕事のやり方を吸収していたときと同じペースで育たないのではないかと心配する上司もいる。
新型コロナウイルスの世界的流行が始まり、会社の運営方法が急激に変化してからしばらくたった今、在宅勤務は安全確保のために今年は当面必要だが、危機後の長期的な解決策としては好ましくないと考える企業幹部が増えている。
人材関連のスタートアップHumu(フーム)の最高経営責任者(CEO)で、グーグルで人材部門のトップを務めたラズロ・ボック氏は「企業の幹部は表立っては言わないが、『(在宅勤務は)長続きしないだろう』と感じ始めている」と話す。ボック氏によると、在宅勤務が定着したころに見られた生産性の伸びは既にピークを迎え、横ばいになったと聞いても驚くCEOはいない。従業員が3月にノートパソコンを手にオフィスを出たときには強い危機感があったからだという。