医療は社会保障
そもそも自国のためのもの

 そもそも医療というものは「社会保障」であり、基本的に「自国の医療を自国で賄う」といった考え方が中心である。しかし、医療が進歩し、最先端の技術が診断や治療に使われるようになり、国・地域によって医療技術の大きな格差が生じたり、医療が産業化したりすることで、国内だけでは医療が完結しない状況が出てきた。

 すなわち、それが医療のグローバル化、国境を超えて医療を受けに行くという医療ツーリズムという新たな産業化にもつながる。

 もっとも、筆者がヒアリングしてみると、多くの国の政策当局は、患者を他国に取られるという意味では医療ツーリズムをよしとしていない。「自国の中で医療が完結しない」というのは政権の問題ともとられかねないからだ。言い方を変えれば、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)という呼び方をされることもある「国民皆保険制度」によって、「自国民は自国の中で、最高の医療を、少なくとも標準的な医療を受けることができる環境整備は必須」というのが米国を除いた先進国の潮流なのである。

 今回のコロナ禍で、薬剤やマスクなどを自国で生産するという動きなども含めて「医療を自国で完結しよう」という動きは、日本のような先進国ではさらに加速すると予想される。

 しかしながら、先に述べたようにすべての国で高度な医療を提供することができるわけではない。そこに今回の話題である「医師の確保および医師免許の取り方」の意味が出てくる。

自国に
医師を呼び込むドバイ

 単純に「自国で最高の医療を提供する」ということを考えた場合に、どうすることが最も近道なのか。

 もし、その国に豊富な資金があれば、海外の優秀な医師を自国に呼び、最高の設備・機器をそろえた病院を作れば、まさしく国民には「最高の医療」を提供することが可能になる。

 実際にこういった戦略をとっている国がある。例えば、ドバイ(正確にはドバイは国ではないが)を中心としたアラブの国々である。

 いわゆる「スーパードクター」や「ゴッドハンド」と呼ばれる日本の著名な医師を、高額な報酬を提示して招へいしようとしたり、あるいは「手術をしてほしい」といった交渉をしていることは広く知られている。実際に、そういった国で手術を行っている日本人医師もいる。