「eumo」の実証実験はどうだったのか?
――「共助」といえば、共感コミュニティ通貨eumo(ユーモ)も、みんなでひとつの財布を共有し、幸せなお金を分かちあう仕組みですよね。実証実験でどんなことがわかりましたか?
eumoの実証実験は、のべ1285名に参加いただきました(対象期間:2019/9/15~2020/2/9)。
実験したことで、eumoを利用する人たちがつながっていく状態を可視化できたことがよかったですね。お互いに関心を持つようになって、ユーザーや加盟店のなかで「関係性」が生まれ、志ある人たちを応援している。素敵な想いを持つ人と直接つながっていることに価値があり、共感にもとづく関係性は、経済合理性を超えることがわかりました。
終了後のアンケートでは、約26%の人が定価よりも多くのeumoを加盟店に支払ったという現象が起きています。「ありがとう」や応援の気持ちがeumoに上乗せされているということ。そういう新しいお金を作ることができた意味は大きかったですね。
7月21日に、eumoアプリを正式にリリースしました。6月には、アプリの開発費用とeumoの仲間づくりのために、READY FORのクラウドファンディングに挑戦しました(編集部注:正直ものがバカを見ない社会「めんどうなお金」プロジェクト。終了した6月30日時点で、支援総額1135万6500円/支援者942人)。
ご縁と感謝がめぐる「エモーショナル」なお金
――「eumo」の加盟店はどうやって決めていくのですか?
加盟店の条件は、ユーザー3名の推薦です。いわゆるご当地自慢ですね。たとえばPayPayのようなペイメントサービスは、どこでも使えることがメリットですが、eumoは加盟店しか使えません。推薦した人の顔が出るから、ユーザーは自信を持って紹介できるところしか勧めない。だから、明確な信用が生まれるのです。
eumoにはギフト機能があって、10%のチップがデフォルトになっています。そのうち5%はeumoの運営手数料に充て、残りの5%を加盟店が受け取る仕組みです。ユーザーは、eumoを利用する時に「想い」を乗せてチップのように贈ることができます。電子通貨の特徴を活かして、つながりや応援の輪が可視化できるようにするので、困っていることもシェアしやすい。災害時には、被災した加盟店のオーナーを直接応援することも可能です。「共助」のお金が循環する仕組みができれば、まじめにがんばっている人や、困っている人に必ずお金が届くようになります。
eumoは広告モデルではないんですよね。通常時は応援しているファンが多いところや、ギフトを多く受け取った順に表示して、災害時は支援が必要な人を優先できればと考えています。有効期限(3か月)を過ぎたeumoの90%は、みんなで共有する財布にストックし、eumoをたくさん使った人に再配布。残りの10%は、加盟店の社会貢献活動に利用します。こうしたことによって、どんどん現地に行ったり、ギフトしあうほうが得だよねと利用者が感じられるようにします。透明性を担保するために、そのプロセスもすべて開示します。
――「eumo」は現地に会いに行くことで、さまざまな価値を生み出すお金ですが、コロナによって自由な移動が制限された場合は、どうなるのでしょうか?
実は、共感のお金としてのベースになるeumoとフェアトレードコインのような色々なものに特化したコミュニティコインなど、現地に行くだけでなく、通販や地域貢献など、さまざまな種類のeumoが登場する予定です。基本的に都会から地域やコミュニティにお金が分散していく仕組みにして、逆流はしないようになっています。
eumoのコンセプトは、幸せになるための手段としてのお金を再定義すること。「素晴らしい人」「素晴らしい旅」に出会うことは、人生を幸せにしてくれます。もちろん、「素晴らしい本」との出会いも重要です。時間と空間を超えて「人」に出会えるのは本の特徴ですからね。