日本の四半期開示は、1999年に東京証券取引所がマザーズ市場を開設した際にスタートした。取引所の自主ルールとして上場企業に四半期開示を義務付けたのだ。業績変動の激しい新興企業を扱うマザーズの特性上、投資家がリスクを取れるよう情報の透明性を高める意図があった。その後、2006年に金融商品取引法により法制化され、2008年より施行された。

 投資家にとっては、四半期開示によって材料が増え、より適切な投資判断につながることが期待できる。特に市場の変化が激しく、ビジネスサイクルも短期化している現代においては、スピーディーで細やかな情報開示へのニーズは高い。

 一方で、四半期開示の弊害としてたびたび指摘されているのは、経営者に短期志向を強い、中長期的視点での経営の妨げになる可能性だ。決算の発表後に、瞬く間に株価が10%以上動くこともざらに起こる。目先の業績見通しを達成しようとするあまり、長期的な技術・雇用・研究開発への支出を抑え、会計操作に手を染める企業さえ出てくる。米国でもこれは同様で、JPモルガンとウォーレン・バフェット氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルに「Short-Termism Is Harming the Economy」と題した論文を寄稿し、四半期ごとの業績見通しが経営者にとって大きなプレッシャーとなっていること、ひいては経済全体に悪影響を与える可能性を指摘している。

 私は、四半期開示制度そのものは否定しないが、「四半期、ないしは年度決算で良い成績さえ出しておけばいい」とする経営者の態度は大いに問題だと感じている。そもそも、この制度は事業年度の途中経過を確認することが趣旨であり、決して3ヵ月間の業績のみで企業を評価することを意図したものではない。経営者がIR等を通じて自社のビジョンや方向性を十分に説明し、株主やステークホルダーからの理解や信頼を構築できていれば、短期間の業績のブレに過度に反応することなく、より大きな視点で目標に向かうことができるはずだ。

 ここまで、四半期決算開示がそもそもの趣旨とは異なる形で日本企業の変革を阻害している可能性を指摘したが、とはいえ制度そのものを突然変更することは難しいだろう。制度のプレッシャーに惑わされず、中長期視点に立った経営者の胆力こそ、まさに今、不確実性の高い現代に求められている。しかしその胆力の発揮を阻害するものがある。これが次に述べるポイントだ。

日本型CEOの低報酬、
長期インセンティブ比率の低さ

 トップ層がその企業を変革するような大きな決断ができない理由として、日本企業に多いサラリーマン社長特有の報酬の低さが挙げられる。海外と比較するとその差は歴然だ。