複雑な音楽ストリーミングの
収益構造
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ここまでSpotifyとその「3つの強み」を中心に、世界の音楽サービスを振り返った。
巨象アップルを打ち負かしたスポティファイ社だが、実は音楽ストリーミングは構造的な問題を抱えている。それは同社のみならず、アップルを含めて経営を揺るがしかねない。特にアーティストへのロイヤリティーでは、長年、批判されている。
音楽ストリーミングは、「1再生当たり幾らがアーティストに入る」といった、1再生当たりの単価で計算されていると思われがちだ。
CDの場合は、1枚売れれば、レコード会社の取り分は900円、アーティストの取り分は90円、といったように収益構造がシンプルだ。しかし音楽ストリーミングの収益構造は非常に複雑である。
その基盤となるのが「レベニューシェア」という収入分配制。あらかじめ契約で決めておいた配分率で利益を分け合う仕組みで、アプリ開発等、ITの分野ではおなじみだ。
仕組みはこうだ。「ストリーミング会社」がまずはその月の収益をまとめる。次にその収益を「ストリーミング会社」と「楽曲の権利者」で分ける。例えば「ストリーミング会社」が30%、レコード会社などの「楽曲の権利者」が残りの70%、といった具合だ。次に「楽曲の権利者」の取り分を、レコード会社や音楽出版社、プロダクション、アーティスト等へ配分していく。
事あるごとに「Spotifyはアーティストへきちんとロイヤリティーを払っていない」「いや、われわれは音楽業界へ多額の支払いを行っている」と言い争いになるのは、こうしたレベニューシェアの複雑さに加え、ストリーミング会社と権利者との契約が機密事項であることも大きい。表に出して説明することができないため、「実際はこんなに払っている!」とストリーミング会社が支払った総額を示すことしかできないのだ。しかもストリーミング会社側は、収益の多寡にかかわらず、レコード会社へ多額の前払い金を支払うケースもある。
さらに複雑なのが、楽曲の「再生回数」の割合で分配率が変動することだ。
例えばCDは1度購入すれば、リスナーが何度聴いても1枚当たりのアーティストへのロイヤリティーは変わらない。しかし音楽ストリーミングは、たとえ同じ曲でも10回聴けば「再生回数10」と、聴くたびにカウントされる。そしてその月全体で再生された回数を集計し、その数を基に分配の割合が決まっていく。
再生回数が多いアーティストほど分配の割合が高まり、再生回数が少ないアーティストは分配の割合が低くなる。メジャーなアーティストほど得をするため、「これでは新人アーティストはやっていけない」と撤退するアーティストも後を絶たない。
Spotifyは玉座から
引きずり降ろされるのか?
この問題は正しい答えが今も見つかっていない。解決には、月額料金を上げて割り当てる金額を上げるか、有料会員を増やすかするのが手っ取り早いのだが、現在の料金は試行錯誤の上のギリギリのラインであり、これ以上、値上げするとユーザーは確実に離れる。そしていつかはユーザー数は頭打ちになる。
軌道に乗る音楽ストリーミングサービスだが、このようにまだまだ課題は多い。権利者への高額なロイヤリティーが足かせとなり、スポティファイ社を含め多くの音楽ストリーミング会社はいまだに配信サービス自体で利益を上げることができていない。根底には音楽へ相当の対価を払うことをいまだにちゅうちょするリスナー側の要因もあるが、啓蒙活動を怠ってきた音楽業界の責任も大きい。そうこうしているうちに、このひずみを解決する新たな音楽系スタートアップが現れるかもしれない。
世界最大の音楽ストリーミングサービスとなったSpotifyだが、成長期のような巧みなフットワークでさらに成長を遂げるのだろうか。または新たなスタートアップに足元をすくわれ玉座から引きずり降ろされるのだろうか。かつてスポティファイ社がアップルに行ったように。
Spotifyの本当の正念場はこれからだ。
Key Visual & Graphic by Hirokazu Mori(waonica)








