コロナ禍で炙り出された
サブスクの弱点
1再生当たり0.05円では、サブスクのみで年収500万円を稼ぐには年間1億回の再生が必要だ。グループで活動していたら生活は絶望的である。
結果、世界ではレコード会社のみならず、配信業者にも批判が集まるようになり、SpotifyやApple Musicは急きょ、アーティストへの支援金を用意した。だがそれは根本的な解決策ではない。原資である月額売り上げを増やすのが本道だが、定額制であるため、国民の一定数が有料会員になるとそれ以上の売り上げ増は見込めなくなる。事実、北欧諸国で国民の半数近くがSpotifyの有料会員になると、売り上げは頭打ちとなった。
ステイホームで急伸したNetflixと違い、「外で楽しめる」ことをフックに有料会員を増やしてきた音楽サブスクはここで停滞した。
進行する
「音楽のデフレ化」
「音楽のデフレ化」も進んでいる。元々、サブスクが音楽産業の救世主となった理由は、月額の「10ドル」が、CDの「15ドル」に近かったことにある。
年間を通せば有料会員は「CD8枚分」も支払っているため、平均すればCD時代よりも売り上げが増える寸法だった。
だが、CDの誕生以来、録音物の値段は上がったことがない。その間、世界経済は日本を除いてインフレが進んできた。結果、たとえCD8枚分であってもアーティストにとってその報酬は見合わなくなったのである。
「音楽のデフレ化」は日本で特に顕著だ。CDはわが国特有の「再販売価格維持制度」で守られているため、2000円から3000円と、海外と比較して倍近い値付けがされているが、平均2500円と考えても、月額980円は年間で「CD5枚弱」と、世界平均のCD8枚分と比べてかなり安い。
そもそも「月額980円」は欧州の「10ユーロ」と比べて2割も安い。サブスクをわが国でも救世主にするには「月額1600円強」が妥当で、その計算から日本では元々「月額1980円」で始まり、「1480円」にもトライした。しかしこの値付けは、スマホやアプリの日本の相場観では高過ぎて、結局、Apple MusicやSpotifyが上陸した年に980円となった。
「それでもCDを併売できれば」と日本の音楽業界は考えた。だが、グッズ化したCDがコロナ禍によってライブ会場で販売できなくなると、そのもくろみは崩れた。結果、低報酬を理由にサブスクへ参加していなかった国内アーティストも、次々とサブスク解禁へ動くこととなった。
YouTubeの無料視聴も課題になっている。世界では音楽視聴の半分が無料動画となっており、これはサブスクを超えている。動画共有のARPU(Average Revenue Per User/ユーザー1人当たりの平均売上金額)は、サブスクの70分の1と極めて低く、欧米では著名アーティストが集い、著作権法の改正運動が活性化。EU(欧州連合)では改正法が成立した。日本の動きはここでも希薄だ。
中国エンタメ市場に見る
新たな答え
中国のエンターテインメント市場規模は、2年後には世界1位になると予測されている。コロナ禍で音楽サブスクの売り上げが停滞する現在、欧米の音楽産業が注目しているのが米ナスダックにも上場した中国テンセント・ミュージックだ。
中国ではサブスクが音楽生活の中心だが、そのサブスク以上に稼いでいる「ソーシャル・エンターテインメント売り上げ」という項目が同社には存在する。
中国市場で8割のシェアを有する同社は、音楽配信アプリだけではなく、チャット、カラオケ、チケッティング、ライブストリーミング、決済アプリ等々、あらゆる分野でナンバーワンを確立している。その中で、50円、100円といった単位のマイクロペイメントをうまく活用し、例えばカラオケアプリ内でお気に入りの歌手に有料の(バーチャルな)トロフィーを贈ったり、歌詞ポスターを購入したり、オンライン上のファンクラブを構築したりできるなど、さまざまなサービスを提供している。
「音楽×コミュニケーション×マイクロペイメント」の公式は、かつて日本でも「着うた」が大成功を収めている。加えて中国では、アルバムの発売をサブスクよりも数週間早めることで、コアなファンの購入を促進。テンセントのアルバムはミリオンセラーを連発している。







