3つ目は、「働きやすさ」です。これからの時代は、働きやすさがなければ、企業は社員や求職者から選ばれなくなると考えています。

 これまでは、「働きがい」「ワークエンゲージメント」といった仕事そのもののやりがいや仕事へののめり込みに比べて、「働きやすさ」は軽く見られているところがありました。

 もちろん、近年、働き方改革やダイバーシティー推進といったテーマとともに働きやすい職場づくりに注力してきた企業は数多くあります。しかし、そうした企業でも「働きやすさは企業の競争力につながるのか」「働きやすい会社、というのは社員に甘いだけの会社でないのか」「働きやすさは、育児・介護などのライフイベントに直面した人のもの」といった声は根強く、「働きやすさ」よりも「働きがい」が企業において重視されていたようです。

 しかし、テレワークの拡大は、テレワークが難しい業種や職種と比較的容易な職種、テレワークに積極的な企業と消極的な企業という区分けを明確にしてしまいました。以前から、優秀な若手社員は働きやすさを重視して企業を選ぶ傾向はありましたが、この流れがテレワークの拡大によって、より鮮明になったと考えられます。

 また、自律的な業務遂行で成果を上げる社員が増えてくることによって、「働きがい」と「働きやすさ」の距離が縮まっているのを感じています。テレワークによって自宅というライフの一部にワークが内包されるようになりました。いわば、「ワークライフバランス」というワークかライフかという世界から、「ワークインライフ」の世界への移行です。

 従来、「働きやすさ」に関する施策は、ワークに対応するライフへの配慮、福利厚生的な側面が強かったのですが、ワークインライフの下では、「自分が一番成果を上げられる環境を(自分で)整備すること」も求められるようになります。企業が提供する働き方への自由度・柔軟度が高いほど、こうした環境は整備しやすくなります。これこそ、今後求められる「働きやすさ」です。

 これからの時代、「働きがい」の実現のためにも「働きやすさ」が重要となり、双方が二項対立で語られる状況から、一体不可分になっていくのは明らかです。これからは「働きがい」より「働きやすさ」が重要、ではなく、「働きがい」も「働きやすさ」も重要、という流れになるのではないでしょうか。