こうしたフラットな世界で行われるコミュニケーションは、企業がこれまで抱えていた課題を飛び越えられる可能性があります。フラットな関係性が少しずつ当たり前になれば、例えば、若手社員などの新たな意見にフォーカスも当たり、新たなイノベーションが生まれる土壌につながるのではないでしょうか。

 2つ目が、「一斉・一律から、一人一人にちょうどよい世界へ」です。コロナ禍で行われたテレワークは、「一斉に」「大規模に」「急激に」行われたため、さまざまな問題や不自由なこともあったと思います。しかし、なんとかテレワークをやれたという実感もあったはずです。

 これまでの伝統的な日本企業の人事施策には、2つの特徴がありました。1つは変化が訪れるときは、ほぼ「外圧」がきっかけであることです。例えば、法律の要請に従って会社を変えるところからスタートして、その後実際に会社の中が変わっていくことがしばしば起こります。もう1つは、「一斉」や「一律」「公平」であることを大事にしている点です。「この人たちにはできるけど、あの人たちにはできない」という不公平に捉えられる施策の導入を嫌がる人事はたくさんいます。

 これは日本企業における企業とそこで働く人との関係性や、労働組合の存在などから、必要だから大事にされてきたわけであり、これまでの考え方・やり方を否定するものではありません。しかし、今回テレワークを実行するにあたっては、「できるところからやっていこう」「やりながら修正していこう」という流れだった企業が多かったはずです。それで実際に実現できたことを体感し、もしかしたら「一律」「公平」にこだわらなくてもいいと思い始めるきっかけになっているのではないでしょうか。

 これまで一斉一律な“平均的な施策”をやろうとすると、誰にとってもフィットする施策になっていない、うれしい施策になっていないことも少なくありませんでした。そうした状態から、一人一人に、ちょうどいい施策を提供することを社員と一緒に考えていける萌芽が今回のテレワークで見えたと思います。働くにあたって、オフラインでもオンラインでも、自分の能力が最も発揮できる時間と場所を選択できれば、一人一人にちょうどいい施策の最たるものになるでしょう。