大手ベンチャーでさえ反対する親も
親の「就活への理解不足」背景に
まず、もめる背景にあるのが、親と子の「就職環境のギャップ」だ。親世代と子世代では、就職を取り巻く環境は大きく変化しており、親世代の就活の常識はもはや通用しないが、それを理解できていない親が少なくない。
「現在の就活生の親世代が主に就活を行っていた30年前は、バブル期で空前の超売り手市場。数社受けるだけですぐに内定が取れるような時代だった。それに対し、今は30社にエントリーしてようやく1社内定が取れるような就職環境だ。それを見て『お前がダメだから内定が取れないんだ』などと言うのは、自分の時代の感覚だけで就活を捉えている親の典型だろう」(間山哲規・レバレジーズ執行役員)
大卒求人倍率を親世代と子世代で比較すると、2020年3月卒は1.83倍に対して、親世代の1992年3月卒学生は2.41倍(リクルート「大学求人倍率調査」より)。コロナ前の就職市場も売り手市場といわれていたが、当時はそれを大きく上回る状況だったのだ。
さらに、大学生の就職先である業界も大きく変わっている。1993年は製造業が26.1%、サービス業は25.4%だったのに対し、2019年には製造業が12.1%、サービス業は33.9%に変化(文部科学省「学校基本調査」より)。就職先の代表格は「メーカー」から、30年前には見られなかったインターネットを中心とした「新しいサービス業」へとシフトしている。ここ10年から20年の間に、多くのインターネット関連のベンチャー企業が誕生し、成長しているのは誰もが知るところだ。
こうした産業構造の変化について、親世代は普段の生活では実感できていても、就活となると自分の時代の常識を当てはめてしまうのだろう。そのためか、「『ベンチャーは大変だから、大企業に就職した方がいい』という親もいる」(間山氏)のが実態で、歴史のある大手企業やその大手企業の名前が冠についた関連会社でなければ安心できない親も少なくないようだ。間山氏によると、実際にレバレジーズのような大手ベンチャーでさえも、親が入社に難色を示すケースがあるという。
前出のリノべるも同様で、「(新卒入社の)最初は、大手企業に行っておけば?」と親から言われる候補者や内定者もいる。そこで同社では、事業内容などが掲載された雑誌などを内定者に配って親へ渡すように促すなど、「こうした情報発信を通じて、親御さんにリノべるのことを理解し、好きだと思ってもらえる」(安河内氏)ような工夫も行っているそうだ。