クラスター懸念で
内定式も結局非対面に

 新型コロナウイルスの終息が見えないこともあり、全般的に企業の採用意欲はやや減退しているという印象です。企業はむろん、21年卒の採用計画として、何人採りたいという数字は作っていましたが、それは必達目標ではなく、今回はこういう状況下でもあるので、目安くらいに捉えているところが多かった。充足率は100には達していないのではないかと思われます。

 こうして、なんとか採用を終えた企業の多くが「内定式ぐらいは対面でやりたい。おそらくその頃には対面でできるだろう」と当初は考えていました。ところが7月に入って新型コロナの新規感染者が再び大幅に増加し始めたので、断念せざるを得なくなっている。ソーシャルディスタンスを取るなど、3密を避けることで、会場の中のことだけを考えれば、内定者を集めることはできるかもしれません。ただ、内定者の中には地方の学生もいます。この時期に都道府県をまたぐ移動をさせるのは、あまりにも大きなリスクを伴います。

 内定式で重要なのはなんといっても懇親会です。本来なら、内定式で翌年から一緒に働く同期や先輩社員に初めて会って、交流し、親睦を深めることができたはずです。企業にとっても内定者にとってもそこにこそ意味があるイベントです。

 ところが、この懇親会も、長距離移動と並んでリスクが高い。会食での感染事例はよく報道されています。ある総合設備エンジニアリングの企業が、研修所で新入社員を集めて研修を行い、クラスター(集団感染)が発生したというニュースもありました。企業としては、クラスターの発生はなんとしても避けたい。もし内定式の懇親会などでクラスターが発生したら、会社のイメージにも大きな傷が付きます。それで内定式も対面で実施しない会社が多いのです。以上が企業側の採用から内定までの今年の状況です。

 では学生にとって今年の就活はどうだったのでしょうか。21年卒の就活では、例年以上に明暗を分けたのは情報量の差だったと思います。早くから動いていた学生は、企業やOB・OGからもらえる情報が多い。当然ながら、情報量が多いと、それだけ企業に対する理解が深くなり、その分、表面的ではない、リアリティーがあって説得力のある志望動機を話せたり、入社後のキャリアイメージを具体的に描きやすくなったりします。

 企業は今の時代、さすがにもう大学名だけで学生をスクリーニングするようなことはしていません。学生がいかに自社を深く理解しているか。自社のどこに興味を持って、どのくらい本気で志望しているのかを詳細に注意深く見ています。その意味で、どの学生にもチャンスはあるといえます。

 ふたを開けてみれば、オンラインに始まりオンラインに終わった21年卒の就活。すでに22年卒の就活やインターンシップが始まっています。こうした状況下で企業はどんなインターンシップを行うべきか。また、学生はいつから何をしなければならないのか。次回以降で順次詳しくお話ししていきます。

(ダイヤモンド・ヒューマンリソース HD首都圏営業局 局次長 福重敦士)