原子力発電所など旧来の電力ビジネスでは、東京電力ホールディングスなどの大手電力会社がヒエラルキーの頂点に立ち、総合商社やメーカー、ゼネコンに対して幅を利かせてきた。しかし、グリーンエネルギー新世紀の到来によって、旧来のヒエラルキーは崩壊する。特集『洋上風力会戦 グリーンエネルギー新世紀』(全6回)の最終回では、商社やゼネコンによる下克上、それに対抗する大手電力という新たな戦いを追った。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
殿様商売を謳歌する大手電力に
商社やゼネコンはひれ伏してきた
旧来の電力ビジネスにおいて、大手電力会社はヒエラルキーの頂点に立つ王様だった。発電所建設を受注したいゼネコンや設備を売りたいメーカー、発電燃料を売りたい商社が群がり、それを選ぶ側だった。
建設や燃料の購買などでコストが膨らんでも、利益の心配は無用。事業にかかるコストに一定程度の利潤を上乗せする「総括原価方式」で商売し、電気料金もコストに利益を乗せて決めていた。大手で縄張りを分け合い、価格勝負を挑む競合など存在しなかった。
殿様商売を謳歌する大手電力に、商社やメーカー、ゼネコンはひれ伏した。
しかし、盛者必衰のことわりあり。2011年3月の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に、殿様商売が世論の厳しい批判にさらされるようになった。16年4月に電力小売りが全面自由化となり、20年4月に送配電事業が法的分離され、総括原価方式はほぼ廃止に追い込まれた。
そして今、太陽光や風力など環境に優しい「グリーンエネルギー」が拡大する新たな時代が訪れようとしている。この機に総合商社やゼネコンが動いた。大手電力に擦り寄るのではない。狙うは下克上である。