コロナ禍で確実に内定を取る
就活生の動きが顕著に

 今回発表された求人倍率からは、コロナ禍で就活生の意識が大きく変化していることが読み取れる。最大の変化は、中小企業への就職を希望する学生が増えていることだ。従業員300人未満の企業でも求人総数は前年比6万6700人減っており、全体の傾向と変わらない。しかし就職希望者数は前年比6万300人も増えているのだ。その結果、従業員300人未満の企業の求人倍率は、前年の8.62倍から3.40倍へと大きく低下している。コロナ禍で「確実に内定を確保したい」と考える学生が増えていることの表れだろう。

 一方、従業員5000人以上の大企業では、求人総数が前年比8200人減少したが就職希望者数も5万900人減少しており、求人倍率は前年の0.42倍から0.60倍に上昇した。ここからも、学生が狭き門である大企業を避け、中小企業にシフトしている様子がうかがえる。

 リクルートの今回の調査では、もう一つ興味深いデータがある。コロナ禍の前後(20年2月時点と6月時点)で企業の採用予定人数がどう変化したかをまとめたものだ(図2参照)。このデータからも企業の採用意欲が減退していることが分かる。そもそも21年卒の採用予定人数は、2月時点で20年卒と比べて4.6%減少する計画だった。それがコロナ禍の6月時点では、前年より減少している2月時点からさらに11%も下落している。

 ただし、業種別に見ると下落率には濃淡がある。2月時点からの下落率が最も大きいのはサービス・情報業で、17.4%も落ちている。製造業も同12.6%の下落となっている。唯一、建設業だけは、2月時点の対前年比、2月時点と比べた6月時点の数字が共にプラスとなっている。

 これまで見てきたように、21年卒の就職・採用活動は新型コロナの影響を強く受けているものの、就職氷河期の再来とまではならないだろう。そんな中、21年卒の就職・採用活動はいよいよ終盤戦に入っているが、8月1日時点の就職内定率は81.2%と、前年と比べて10ポイントも低くなっている(リクルートキャリア「就職プロセス調査(2021年卒)」より)。採用意欲の減退に加えて、コロナ禍で企業の内定出しのタイミングが後ろ倒しになっていることも影響しているとみられる。

 全体ではまだ2割弱の学生が内定を得ていないという今回の調査結果だが、悲観する必要はない。まだ採用活動を継続している企業も多いからだ。求人倍率からも分かるように、大企業だけでなく中堅・中小企業にも目を向ければチャンスはまだある。今からでも決して遅くはないので、企業選びの選択肢を広げるために積極的に行動してほしい。

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