メディアには「女のカラダ」に関する都市伝説があふれています。
「あたためは生理痛にも妊活にも効く」「仕事をしすぎるとオス化する」「恋愛やセックスをしていないと女性ホルモンが枯渇する」……。これらはどれも、医学的には根拠のない情報。でも、それに振り回されて、不調のスパイラルに陥ったり、落ち込んだりする女性は少なくありません。
「女体」についての第一人者、産婦人科医の宋美玄先生が、いまの医学でわかっている「ほんとうのこと」だけをベースに20代~40代女性の、身体や性の悩みに答えた新刊「医者が教える女体大全」の中から、一部を抜粋して紹介いたします。

ここ100年で先進国の女性に女性特有の病気が増えた理由Photo: Adobe Stock

女性の一生の生理の回数はこの100年で激増

 女性の健康について講演する時、いつもはじめに出題するクイズがあります。

「この100年くらいで先進国の女性には、女性特有の病気が増えました。子宮内膜症、卵巣がん、子宮体がんなどです。それはなぜでしょう?」

①エアコンが普及し、夏でも身体が冷えるようになったから
②石油から作られた生理用ナプキンが普及し、有害物質が子宮に取り込まれたから
③食品添加物が広く使われるようになり、子宮や卵巣に蓄積したから
④これらのいずれでもない

「医者が教える女体大全」にも繰り返し書いていますが、①から③のような「現代人の身体が危ない!」といった言説は、実際のところ、女性の健康にはほとんど影響はありません。正解は、④です。

 具体的にいうと、この100年で女性の身体の環境を大きく変えたものは、出生率の低下、出産開始年齢の高齢化、です。昔の女性は15歳くらいで初潮が来たら結婚して、子どもをたくさん産んでいましたが、現代では栄養状態が良くなって初潮が早まり、子どもを産む人数も少なくなりました。そのため、生理の回数が昔の女性に比べて何倍も増えているのです。生理の回数が多くなることで、子宮や卵巣に昔よりも負担がかかるようになっています。

 多くの方が、生理があるのは「女性の証」「健康の証」だと思っておられたことでしょう。もちろん、ホルモン治療もしていないのに生理がちゃんと来なかったらそれは健康とはいえませんが、「自然にしてさえいれば健康」「ピルなどで生理を止めるのは不自然、不健康」という認識は残念ながら正確ではありません。

 多くの女性が生理痛や生理前の不調、更年期障害を「女の宿命」として受け入れ、振り回されていますが、実はもっとラクで健康になれる治療法がたくさんあります。健康保険も適用されサプリや健康グッズよりも経済的負担も少ないのに、このことはあまり知られていません。保健体育で生理のことを教わって以来、女性の身体についてアップデートする機会がなかったと思いますが、実際には、医療や医学は日進月歩なのです。

  女性をとりまく社会的環境が変わっていくのに応じ、生理やホルモンのコントロール方法も変わってきます。人生100年時代、生理やホルモンに振り回されるのが「女の宿命」と思わずに、こちらからコントロールしてやりましょう。