人は「見られる」と柔軟性が高まる

 ペアプログラミングが浸透している組織においては、みなが多くの箇所の機能追加やバグ修正を行うことができる。チームメンバーのプログラミングを隣で見ているし、ドライバー(プログラミングする人)とナビゲーター(プログラミングを見ている人)とが交代するので、自らもさまざまな箇所のソースコードを触ることになるからだ。

 変化の時代においては、やるべきことが突発的に変わることもある。そのときに、「〇〇だけをずっとやっていた人」ではなく、それぞれのメンバーが多くの種類の仕事をこなせるようになっていることで、チームの柔軟性も高まっていく。

人は「見られる」とノウハウを提供する

 本人は特に意識せずに使っていた「当たり前のテクニック」が、実はとても便利なもので、チームメンバーは初耳だった。ペアプログラミングをすると、こういうことが時折ある。これは何も「できる人が一方的に知識を提供する」話ではない。「新人が使っているショートカットをベテランが知らない」ことも多々ある。

 だからペアプログラミングの浸透した職場では「おおおお……、これは知らなかった。超便利」という声が上がり、周囲の人が「なになに」と集まってきてちょっとしたイベントになることがよくある。

 人が隣にいること、人に見られていること、人と知識のやりとりやその他の会話をすることが生み出す効果は計り知れない。心地よい緊張感、人と話すことそのものの喜び、未知のことを知るワクワク感、人にカッコいいところを見せることができたときの嬉しさ。こうしたコミュニケーションが、職場を活気ある楽しい場所にしていくのだ。