在宅勤務が続く企業では、経営者は「社員が仕事をしていないのではないか」といら立ち、社員は「上司に正当な評価をされていない」と不安を募らせていることが少なくない。しかし、この状況を解決しようとして、マネジメント過多に陥ると本末転倒な事態になる。(モチベーションファクター代表取締役 山口 博)

在宅で社員が遊んでいる!?

「在宅勤務で部下がサボる!」管理強化が組織を崩壊させる本末転倒社員の姿が見えない在宅勤務。管理を強化しようとする組織もあります Photo:PIXTA

 在宅勤務の状況が続く中、経営者からは「社員の姿が見えない」「社員が仕事をしているのか、していないのかわからない」といういら立ちの声が聞こえる。一方社員の側からは、「苦労していることを会社はわかっているのか」「上司に正当な評価をされているだろうか」という不安が高まっている。

 社員がシステム上で入力したスケジュールを、全社員が見られるように公開している企業もある。上場企業U社でもスケジュールを公開している。しかし、会議予定が入ればそのスケジュールを入力するが、一人で行う業務をスケジュール表に入力する社員はほとんどいなかった。在宅勤務が進む中、リモート会議がポツポツと予定されているが、会議自体の開催頻度も下がっており、大方の社員のスケジュールは空白だった。

 あるとき、U社の社長が、全社員のスケジュールを公開したという報告を受けて、自らスケジュールを見にいった。そして、ほとんどの社員のスケジュールがスカスカであることに驚がくを覚え、社員は誰も仕事をしていない、在宅で遊んでいるのではないかと思い込み、「このままでは、うちの会社はつぶれる」とつぶやいたという。

 しかし、実際のところU社の社員は、一生懸命働いている。対面で仕事ができないハンディを乗り越えようと、さまざま苦労しているのに、その努力が経営者に伝わっていないのだ。このまま放置していては、相互の信頼関係が低下することは目に見えている。