過度なマネジメントが招く本末転倒な事態

 このような状況に直面している企業は少なくない。そこで、「スケジュールに個人作業の予定も入力してください」「毎日、業務報告書を上司に提出してください」「毎日、必ず、チームミーティングをして、取り組み確認をしてください」と、次々とマネジメント強化の指示が出される。

 それで信頼関係は高まるかといえば、実は、逆効果になってしまうことが多い。これらの指示が、経営者や上司のいら立ちを解消させる施策でしかないからだ。「個人作業もスケジュールに入力しろとは、自律裁量の余地を与えないのか」「毎日、業務報告しろなんて、忙しいのに輪をかけて負荷をかけないでくれ」「そんなに部下を信頼していないのか」……というように、社員の不満を高めてしまう。

 結局、形ばかりのスケジュールをいやいや入力して、揚げ句の果て実態と乖離(かいり)したものになってしまったり、形式的な業務報告が繰り返されるだけになってしまったり、チームミーティングをしても誰も何も発言しないという本末転倒な事態を招く。

目的と施策が一致しているか

 では、どうすればよいのか。スケジュールの入力も、業務報告書の提出も、チームミーティングの実施も、かなえたい最終目的に照らして、実施するか実施しないかの判断をすることが大事だ。実施するとすれば、どのように目的を伝えるか、そして実施した際、上司サイドはそれにどう応えるのかを考える必要がある。

 業務の見える化をするという目的であれば、スケジュールの入力と、業務報告書の提出の両方を実施する必要はない。どちらかを実施することにしても、ある程度目的を果たせるし、重複作業は無用となる。ミーティングでの業績確認も、業務報告書を確認することで事足りる。

 社員のモチベーションを高めることが目的であれば、チームミーティングで業績確認を実施することは無用だし、実施したとしても優秀な業績を上げた人を顕彰するだけでよい。

 モチベーション向上の目的であれば、業務報告書でも、チームミーティングでも、上司が社員を鼓舞激励することがとても大事だ。部下が提出した業務報告書に上司がコメントする際や、チームミーティングで上司が話す際のリアクションだ。上司の声のかけ方一つでも、部下のモチベーションを向上させるきっかけになる。このように申し上げると、「それはわかるけれども、具体的に何をすればよいのか」という質問を受けることが多い。