例えば、その日のうちに片づける仕事が多数ある場合を考えてみよう。

 私は簡単な仕事から先に着手することが多い。簡単な仕事を終わらせて残タスクの数が少なくなれば、「残すは難しい仕事がいくつかあるだけ」と気がラクになり、やる気も出る。「最初に力を抜いて温存し、最後に全力でダッシュする」ラストスパート型の仕事の仕方だ。

 だが最初に難題を片づけ、「数はあるけど、あとは簡単な仕事だけ」のほうがやりやすいというスタートダッシュ型の人もいる。

昼寝を欠かさないスーパーエンジニア

 もっと具体的な例を挙げよう。私が以前一緒に仕事をしていたエンジニアで、「仕事中にウツラウツラと寝ているが、ガバッと目を覚ましてからはとてつもないスピードで仕事を片づける人」がいた。

 彼にとっては、休憩に加えて昼寝をすることこそが「力を抜く」ポイントだったわけである。そして全力で仕事を終わらせると、またウツラウツラと寝始める。

 彼にあったペース配分は、「全力で走り、しばらくジョギングし、また全力で走る」というインターバル走のようなペース配分だったのだ。

 当時、彼の上司だった私は、当然そのことで彼に注意をしたことは一度もなかったし、彼は昼寝をしながら成果を出し続けた。

 仕事だけでなく、人生全般についても「400メートル走の教え」は多くの場面において示唆的だ。自分にあった形で力を抜くことで、長く、速く走り続けることができる。だから自分自身の「人生のペース配分」を見極めて、周囲の人のペース配分にも寛容でいよう。自分も周囲も楽しくなるし、チームの生産性も高くなる。