「メガネがなくて一番困るのはスマホを見る場合だから、近のほうがいいんじゃないかな。外を歩くときには絶対メガネが必要ということなら、逆に忘れる心配もなさそうだし。実際、どう見えるか想像がつかないから迷うなぁ。

 多焦点レンズなら、メガネなしの生活が手に入りそうだけど、自由診療だから片目だけでもこの辺の病院では50万円以上。確か3月まで、多焦点レンズは民間保険の先進医療特約で使えたんだけど、今は除外になっちゃったんだよな。残念だけど、ちょっと手が出せないよ。保険診療で入れられる多焦点レンズってないのかなぁ」

 あれこれ検索していると、「あれ、あるじゃん」――保険適用の多焦点レンズが見つかった。多焦点眼内レンズで唯一「保険適用」の『LENTIS Comfort(レンティスコンフォート)』というレンズが2019年4月から発売されていた。他の多焦点レンズは3焦点タイプだが、こちらは遠―中(70センチ程度)の2焦点。だが上手くするとメガネのない生活が手に入るらしい。しかも片目4万5000円で。

 単焦点と多焦点レンズでは見え方がどう違うのかを調べてみると、多焦点は夜間運転の際、グレア・ハロー(光の見え方の不具合)が生じ、人によっては合わないと感じることがあるとのことだが、レンティスコンフォートは、多焦点レンズのなかでは、その不具合が起きにくいという。

 発売開始からまだ1年ちょっとしかたっていないせいか、近場では扱っている医療施設は2カ所しかなかったが、そのうちの1つは車で10分もかからないところにあった。

「これはもう、レンティスコンフォートを選ばない理由はないな」

 というわけで、タダシさんは最初のクリニックでの手術をキャンセルし、2焦点レンズを扱っているクリニックで手術を受けることにした。断りの電話で「レンティスコンフォートを使いたいのですみません」と謝ると受付の女性は「大丈夫ですよ。一生のことですから、よく考えて、最善の選択をなさってください」と言ってくれた。

片目ではなく両目を手術
見え方の鮮明さに感動した

 2焦点レンズを扱うクリニックを受診すると医師は言った。

「このレンズは両目セットで入れることが基本です。白内障になっているのは右目だけと言われたそうですが、左目も進行の程度に差はありますが、白内障です。このまま行けば、近い将来左目も手術が必要になりますから、まずは右目を手術して。その1週間後に左目も手術することにしましょう」