コーチングは、質問して、聴いて、受け入れるという三つのスキルさえあれば、ある程度機能する。私たちは、自分の頭の中にある「ふるい」を通してひとの話を聞きがちだ。それでは選りすぐられた情報だけが残ってしまう。この「ふるい」と戦って、頭に浮かんだ自分の思いをすぐに手放し、相手の話を100%理解しようと思って聞く。これこそがコーチングにおける「本当に聴くこと」といえる。

 質問して、答を聴くことを繰り返したら、「コミュニケーションを完結させる」ことが大切だ。相手の話を要約したり復唱したりして、「話を受け入れた」というサインを発信することで、コーチングのワンサイクルが終了する。

◇自分の気持ちを出発点にしたIメッセージ

「承認」は、部下を認め、強みを最大限発揮させるのに効果的なスキルである。大げさに褒めることとは違う。相手の「存在」について、あなたの「今ここで」の気持ちを伝えることだ。

 承認のメッセージには、IメッセージとYOUメッセージがある。YOUメッセージは、「田中さんって、ステキなひとね」などと、相手を主体にして伝えることである。それに対して「青木と一緒にいると、なんだか安らぐな」というように、発信する側が「今ここで」の自分の感じ方を伝えたものがIメッセージである。正直なあなたの気持ちだからこそ、相手は抵抗感なくそれを受け入れられる。

 Iメッセージでは、発信する側は抵抗感を、受け取る側は照れを感じるかもしれない。だが、だからこそ相手をインスパイアさせるエネルギーをもつため、承認する場合は、I メッセージを使うとよい。

 Iメッセージは、承認だけでなく、コミュニケーションのすべての場面で活用できる。相手を勇気づけ、動かし、刺激し、行動させる力をもっている。私たちは、トラブルがあったとき、「あの部長は、私の話を聴いてくれない」というように、相手を主語にして考えがちだ。しかし、それでは相手を変えることはできない。一方、遅刻した相手に「待っているから、早く来てね」と伝えるように、「私の今の気持ち」を出発点としたIメッセージであればどうか。相手は否定できず、YOUメッセージよりずっと受け取りやすくなる。

 Iメッセージは、相手に対する自分の感情にフォーカスしてみえてくるものを言葉にした、クリエイティブなものである。このように相手に合わせたメッセージを発し、サポートするのがコーチングの極意である。