この人、コンサルっぽい仕事しているみたいだけど、なんかあやしい…。そういった人の中には、なぜか肩書に「コーチング」と書かれていることがしばしばある。かつて自己啓発セミナーや教材に600万円以上もつぎ込んだ経験から『「自己啓発」は私を啓発しない 』(マイナビ新書)を上梓し、現在は人材コンサルタント会社・ネクストスタンダードの代表取締役を務める齊藤正明氏が、コーチングビジネスの闇を暴く。(清談社 角南 丈)
コーチのタイプは3つ
スキル系、感情系、勧誘系
コーチングという言葉は、かなり広い意味で使われており、読者の中にはどんな職業なのかイマイチ分かりづらいという人もいるだろう。コーチングの定義について齊藤氏は次のように解説する。
「コーチングとは、端的にいえばコミュニケーション全般の技術をコーチする職業のことです。相手との円滑なコミュニケーションを通じて、個人や組織の目標達成を図ることを狙いとしています。心理学の知識なども必要となるため、カウンセラーに近い存在と思っていいでしょう」
インターネットでコーチングの料金を調べてみると、相場は1時間1万~1万5000円程度だが、中には10万円近いところも。ジャンルは「ビジネスコーチ」「ライフコーチ」など多岐にわたり、講座の形式も個別(パーソナル)と集団(セミナー)がある。
また齊藤氏によれば、コーチのタイプは、大きく3つに分類できるという。その3つとは「スキル系」「感情系」「勧誘系」だ。
「『スキル系』というのは、英会話教室や予備校などと同じように、コーチが淡々とコミュニケーションの仕方を教えていくオーソドックスな形式です。『感情系』というのは、最近こそほとんど見かけませんが、たとえば、まずコーチが参加者に罵詈雑言を浴びせて号泣させます。その後、参加者が自分の弱さや甘えを認めて克服できたら一転して、『やっぱり君は優秀だ!』と褒めたたえるという講座の形式です。散々それまでののしられていたコーチから『OK』をもらえたときのうれしさは格別で、まるで自分が世界の中心にいるような気持ちにさせてくれるそうです」
感情系コーチングとしてイメージしやすいのが、一昔前にテレビで放送されて大炎上した、「餃子の王将」のスパルタ研修だろう。教官役の幹部が監視のもと、研修中に社則をその場で暗記させ、公衆の面前で抱負を大声で絶叫させた後、最後は従業員と幹部が号泣して抱き合うのだ。ただし、それによってコミュニケーション力がアップするかどうかは、定かでない。