近年の若手世代が“親の背中”を見て学んだこととは

 若い世代の心理にはベースとして「不安」があります。不安定な環境で育ってきた影響が大きいのです。

 現在の30代ぐらいまでの世代は、多感な時代に、社会が劇的に変化する衝撃を嫌と言うほど経験してきました。まず彼らが物心がついたときに「阪神・淡路大震災」「地下鉄サリン事件」(95年)がありました。「アメリカ同時多発テロ事件」(2001年)、「リーマン・ショック」(2008年)も日本に甚大な影響を与えました。さらに、大型の台風、水害、酷暑、冷夏など毎年のように異常気象が叫ばれ、実際に被害の様子を目の当たりにしてもいます。

 不安をかきたてる要素は、災害や事件だけではありません。もはや大企業がリストラ、早期退職者を募るのは珍しくありません。昭和世代の人間なら、大企業に就職が決まれば一生安泰だと思えたでしょう。寄らば大樹の陰、という人生観は現実もその通りだったのです。

 しかし、世はバブル経済の崩壊から平成・令和へと移り、そんな成功の保証はどこにもなくなりました。私は多くの学生から「両親(の働き方)が幸せそうに見えない」という声を聞いています。彼らは「親を見ていると、(働くことに)不安になってきます」と口にします。休日も出勤や出張で仕事に振り回されていた、毎朝早くから出勤していたのに定年前に部署が替わり閑職に回された……。最近のコロナ禍でも在宅勤務を許された親はそう多くはないようです。そんなこともあって、親の背中を見る限り、楽しそうに仕事をしているように見えなかったと言います。

 いまや彼らからすれば、どんなに会社に忠誠を尽くしても、大企業にさえ裏切られる時代です。どんな企業にもリスクはあるし、将来は不安定であると考えています。かつてなら、東京大学に入れば、天下を取ったぐらいの雰囲気がありました。でも、いまの東大生が「将来が不安で、留学したいです」と私に相談に来ることがあります。もはや、東京大学の看板があっても、未来の安心材料だと考えないのです。

 思い返せば、私が学生だった時代は単純だった気がします。とにかく豊かさを求めて、がむしゃらに突き進めた高度経済成長の名残が確実にありました。努力すれば報われる。勉強すれば上に行ける。そして現実に夢見た結果はついてきた。いまや、職場でしゃにむに頑張ることが人生の幸せにつながるとは限らない世の中になったのです。