2020~21年の秋冬は季節性インフルエンザとCOVID-19の警戒が必要だ。
インフルエンザ(以下、インフル)とCOVID-19の共通点は、どちらも呼吸器感染症だということ。インフルの「突然の高熱」、COVID-19の「味覚・臭覚障害」という特徴的な症状はあるがそれ以外の主症状――喉の痛みや咳、頭痛、筋肉痛などは共通しているため区別がつきにくい。
だからといって、インフルとCOVID-19を同じように扱うのは危険だ。COVID-19の治療法については、まだまだ手探りの状態が続いているからだ。
たとえば、炎症を抑えるステロイド鎮痛薬はCOVID-19の重症化を防ぐ可能性がある一方で、インフルではむしろ死亡率の増加につながりかねないことが指摘されている。抗ウイルス薬も、インフルとCOVID-19では異なるので注意が必要だ。「発熱? インフル薬が余っているから飲む?」という「好意」はやめてほしい。
今年8月に開催された「日本感染症学会」で公開された提言によると、インフル流行期はCOVID-19の患者よりもインフルの患者が多くなると予想しており、区別するために外来で速やかに両者の検査を行うよう推奨している。
COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2の検査は対応数が限られているが、幸いインフルの迅速検査は一般的だ。よほど医療機関が混乱していない限り、致命的な誤診は生じないと思われる。
また同学会の提言では、高齢者や持病があり感染・重症化リスクが高い人たちはできる限りインフルワクチンを接種するよう推奨している。ワクチン接種のおまけとして、免疫の『底上げ』によるCOVID-19の重症化抑制が期待できるという説もある。今年こそ老親にインフルワクチンを打ってもらおう。
ともあれ、秋冬を乗り切るにはこれまで通りに生活の中で感染予防を続けていくしかない。家庭内でも手洗いの徹底と3密環境をつくらない努力が必要だ。
寒気のなかで頻繁に換気をするのはつらいけれど。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)